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入部決定! 三曲同好会 6
聖爾が尺八を習った理由は察しがつく。俺が御袋に箏を習っていると聞いていたからだ。趣味を合わせようとする努力だけは認めてやりたいが、軟派野郎には似合わないっつーか、すごく不自然な感じがするけど……こいつの場合、同じ管楽器ならサックスでジャズを吹いているイメージだよな。
しばらく黙っていた土方さんは「わかりました。掛け持ちでよければ、自分が入会します」と言い出した。
えっ、土方さんが入会する? さすがオトコ気のある応援団団長、教授のメンツを思って義理立てしたようだ。
待てよ? 応援団に入るのはさすがに無理だけど、そこでなら、その同好会なら彼と一緒にサークル活動が出来るじゃないか!
憧れの人とお近づきになれるとわかったとたん、頭に血が上った俺は「や、やっぱり入会する!」と口走ってしまった。あれ、同好会への勧誘を受けていたわけではないのに、どこでそういう話になったんだろう?
「ええっ! ミサオちゃん、本気なの?」
青柳がびっくらこいたと言わんばかりに声を上げた。不思議そうにこちらを見る土方さん、聖爾はといえば、俺の突然の発言に戸惑う様子もなく「入る気になったんだね、良かった」と、平然として話を合わせてきた。
何と臨機応変な、っていうか、もしやこの展開はヤツの策略? 俺の入会は土方さんだけでなく、聖爾との距離を縮めることにもなるわけだから……って考えすぎ?
「そちらのお二人もどうですか?」
ついでに誘われて、頷いてしまった赤木と青柳、こうして俺たち三人は尺八同好会の活動に参加する羽目になったのだった。
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