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入部決定! 三曲同好会 9

 これらの邦楽器はすべて聖爾の自前であり、豊城商事の御曹司がその財力で全部手配したというわけだが、彼は俺が入会するのを見越していた、だから絃楽器も用意されていたのでは、という疑惑が胸の内に渦巻いた。  疑惑の人物は「こっちへどうぞ」と俺たちを教授の正面に座らせたが、その腕からブレスレットが消えている。楽器に傷がつかないように金属類ははずす、という配慮ぐらいはちゃんとあるようだ。 「先生、こちらの皆さんが今日入会してくれた一年生です」  その求めに応じて、俺たちは順番に自己紹介をした。 「工化の綾辻です、よろしくお願いします」  その瞬間「こいつがそうか」の視線がいっせいに注がれたが、それは邦楽器を操る期待の星としてか、あるいは工学部のニュー・アイドルという、ありがたい称号のせいか。  俺が名乗るや否や、教授は目を輝かせて「お名前は伺っていますよ」と話しかけてきたが、これは聖爾による前宣伝の成果だろう。 「あなたが入ってくれたお蔭で、尺八だけではなく、箏や三絃と合奏が出来る。尺八同好会を改めて三曲同好会にしようと思います」  三絃とは三味、つまり三味線を示し、尺八はその材料からタケと呼ぶこともある。箏・尺八・三絃、三つ合わせて三曲だ。  何だか物凄く期待されているようで、恐縮した俺が「は、はい」と小さく返事をすると、「美佐緒さんは絃方としての経験が長くて、活動を行う上では大変頼もしいですし、裏千家の師範の免状も取得しているんですよ」と聖爾が自慢げに言った。

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