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入部決定! 三曲同好会 10

 さらに俺を売り込む魂胆か、これを聞いた教授は「それは素晴らしい、今や貴重な大和撫子だ。いずれここで御点前の披露もお願いしたいものですね」と感心した。  大和撫子って、ちょっと表現違うんじゃない? だから、茶道はやらないって。邦楽だけで充分、余計な話はしないで欲しい。  それから他の連中も自己紹介をしたんだけど、もちろん土方さんもいて、彼からの要請があったと思われるあの小太り男・黄山がムッツリした顔で隣に座り、見覚えのある青柳にガンを飛ばしていた。  黄山と俺たちを除く残りの三人は土方さんを含めて機械工学第Ⅱ研究室に所属の、教授の顔を立てて参加した人たちであり、合計八名の男子学生ばかりが揃った。  念願の同好会発足に気を良くした緑川教授は邦楽器の魅力について熱く語り始めた。  伝統として受け継がれている名曲を演奏することはもちろん素晴らしいが、サックスやピアノなど、西洋の楽器とセッションして、ジャズやクラッシック等を演奏するのもまた楽しく、面白さを再発見出来る。  近頃は邦楽器に目を向け、新しいタイプの演奏家として活躍する若者も出てきているが、尺八なんぞは年寄りの楽器だと思っている若い連中もまだまだ多い。そんな彼らに邦楽器の良さを知って欲しいし、実際に、楽器に触れる機会を設けたかった。  教授のそういった考えを聞かされて、これまで御袋たちの教える古曲しか練習することのなかった俺は深い感銘を受けた

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