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入部決定! 三曲同好会 12

 その音出しは既に完了している。尺八を構えた聖爾が息を吹き込むと、美しく物悲しい、独特の音色が室内に響き、その音を頼りに俺は調絃、つまりチューニングを始めた。  調子笛という道具を使うこともあるけれど、自分の耳で音を聞き分けていくこの作業、絶対音感とまではいかないが、そこそこのレベルまで音感が鍛えられると断言出来る。  箏の絃は全部で十三本、一から始まって十、それから斗、為、巾と続く。ロの音とはD、西洋の音階でいうところのドレミのレで、糸の張りを調節する箏柱を動かして一の絃の音をこれに合わせ、さらに五の絃と合わせる。  十は五より一オクターブ高い、同じ音。あとは半音上げたり下げたりして、平調子と呼ばれる音階を作り上げていく。久しぶりの作業に、俺の指は小刻みに震えた。  調絃を終えていよいよ本番。みんなが期待のこもった視線で見守る中、俺は「いんやっ」という始まりの合図を口にした。これは「せーのー」とか、そういう言葉みたいなもので、合奏の時には絃方が合図するのが決まりだ。  俺の爪が鳴らす五の絃の音と、聖爾が吹くリロの音はぴったり一致。調絃では合っていても、いざ合奏となると音が狂うのはよくあることで、これらの楽器がいかに微妙で個人の演奏に左右されるかを物語っている。  六段の調は箏曲としてはメジャーで、お正月にデパートなんかでよく流れている曲。しばらく練習していなくても何とか弾ける部類で、俺はとちりそうになりながらも、とりあえず最後まで演奏することが出来た。
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