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入部決定! 三曲同好会 15

 その時の俺は余程ニヤけていたんだろうな。思いっきり不愉快そうな顔をした聖爾がみんなに呼びかけた。 「皆さんお手数ですが、楽器を駐車場まで運んでいただけますか?」  これらの邦楽器はワンボックスカーに積まれて、聖爾の自宅と大学を毎日往復していたらしい。なんとまあ、ご苦労なこった。 「申し訳ないね、豊城くん。この前、学生課に掛け合ってみたんだが、ちょうどいい保管場所というのがなかなかなくてね。ここに置きっ放しでは盗難や破損の責任が持てないと言うし、尺八ぐらいなら研究室のロッカーに置いてもいいんだが」 「いえ、僕なら構いませんから」  教授からの提案にそう答えた聖爾に、三絃志望の白井という四年生が「部室がゲット出来ればいいんですけどね。楽器は置けるし、そこで気軽に練習出来ますよ」と提案した。  発足したばかりの同好会に部室があるはずもなく、この学生会館の三階から五階の、十五ある部屋は満室で、空きを待っているサークルは幾つも存在するらしい。 「さあねぇ、部室が空くのを待っていたら、この会が先に消滅してしまったりして」  皮肉屋の黄山の言葉に場が一瞬白けたが、「いやいや、私の定年退職が先ですよ」と緑川教授が笑い飛ばしたため、事態は何とか収拾したのだった。

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