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最悪ライバル プルプル女 5
さすが青柳、女には詳しい。学校中の女のプロフィールを把握しているんじゃないのか。
「なーんで俺がライバルなんだよ?」
怒気を含んだ声で言い返していると、俺たちに気づいた緑川教授がやあ、と挨拶しながら女を引き合わせた。
その桃園という女も機械工学Ⅱ研に所属する学生で、教授が尺八同好会を立ち上げたのは知っていたが、尺八はちょっと……ということで当初は入会しなかったらしい。
ところが尺八オンリーから三曲に変更されたとわかり、昔習っていた箏をもう一度やりたいと入会を希望してきたのだ。
「こちらが赤木くんと綾辻さん。同じ絃方としてよろしくお願いしますね」
そう紹介されて頭を下げると、桃園恭子は俺を見下すような口調で「あなたが綾辻美佐緒さん?」とフルネームで呼びやがった。青柳の言う通り、性格はすこぶる悪そうだ。
「はい、よろしく……」
どんなにムカつく態度をとられても、相手は初対面の上級生だし、平静を装って応対していると、俺の全身をじろじろと眺めた上、「その色気のない身体でミス・キャンパスに参加する気なの?」と言い、大きな胸を突き出すと得意げにプルプルして見せた。
「はあ?」
この女、何か勘違いしている。二連覇を成したというこいつも俺を次のミスコンのライバルだと思っているのだろうが、なんでそんなもん、自慢されにゃならんのだ?
美少女もどきの少年は美少年の範疇に入るから、女に敬遠されても嫌われはしなかった俺だが、ここまで露骨に嫌な顔をされ、尚且つ対抗意識を燃やされるのは初めてだった。
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