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御宅訪問 お邪魔しま~す 3

「想像通り、純和風のお宅だね。庭も広くて伊豆あたりの老舗旅館みたいだな」  呼び鈴を押しながら玄関の周りを見回していた彼は中からの返事がないのに首を傾げた。 「あれ、誰もいないみたいだけど……?」 「みんな出払って留守だよ、いるわけない」  もう腹をくくるしかない。俺はポケットからキーホルダーを取り出し、鍵を開けるとヤツの方へ向き直った。 「つまり挨拶しようにも、する相手がいないってこと。わかった? さあ、帰った帰った」 「そうか、せっかく来たのに残念だな。だったらせめて、お茶を一服点ててよ。美佐緒さんの点てた薄茶が飲みたいな」  今度はそうきたか。ただで引き下がるとは思ってないし、それなりに覚悟していたので「茶室は離れにあるし、そこの鍵はバアさんが持っているから、留守には出入り出来ないんだ」と言ってやったが、さあ、どうする? 「じゃあコーヒーでいいよ。さっきから喉が渇いちゃって……」  あの手にはこの手、ついに追い払うことを断念した俺は黙って彼を中に招いた。  この家の外見は純和風だが、一応洋室もある。先に立って客間に案内したあと、コーヒーを淹れた俺は革張りのソファに腰掛けたヤツの前にある、白いレースのかかったテーブルの上にカップを置いた。

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