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御宅訪問 お邪魔しま~す 6

「僕は他の誰かが、それが男だろうと女であろうと、君に好意を持って近づくなんて耐えられない、だから先手を打って婚約の話をした。けれど、君は僕に誰かを近づけたがっている。僕が他の人とつき合ったり、結婚したりするのを望んでいる。それほどまでに僕が嫌いということなの?」  いつも穏やかな表情で、時に、不敵に笑うふてぶてしさで俺を圧倒していた聖爾の不安げな声を聞いて、俺は返事に詰まってしまった。改めて嫌いかと問われると、そこまでの感情はないとわかる。ヤツに抱く想いはむしろ好意に近いかもしれない。が…… 「嫌いっていうわけじゃないけど」 「嫌いじゃないんだね?」  とたんに生気を取り戻した彼は立ち上がり、俺が腰掛けるソファの隣に素早く座ると、手を握ってきた。不安的中、俺は身を硬くして握られた手を引っ込めようとした。 「な、何する!」 「僕は君が好きだ、誰よりも好き……」  端正な顔が近づき、どアップになったかと思う間もなく、柔らかな唇が触れた。  キ、キス? オレは聖爾と、男とキスしてしまったのか? こちらの唇を割って舌が滑り込んでくるとコーヒーの苦味がして、マンデリンの香りにヤツが愛用する柑橘系コロンの香りが混じり合う、不思議な心地だ。頭の中が真っ白になって何も考えられなくなった俺は抵抗すら忘れていた。

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