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御宅訪問 お邪魔しま~す 9

 ムッとした表情で俺の顔を見ていた聖爾はふいに「まさか、好きな男がいるの?」と訊いた。恋する男だって敏感だ。俺が土方さんを思い浮かべたのを感じ取ったに違いない。 「えっ、なっ、なんで」  動揺する俺の様子に、聖爾は意外にも落ち着いた口調で「なるほど。で、君のおメガネにかなったのはあいつだね。学食で会ったときから気にはなっていたんだ。まだ何の勧誘もしていないのに、君が同好会に入ると言ったあのときだよ」と告げた。 「あいつって誰だよ」 「土方誠でしょ。ふうん、彼みたいなのがタイプなんだ」  ズバリ、そのとおり。俺を眺め、冷やかすような口ぶりの聖爾の表情に不思議と嫉妬の色は見えなかった。ムカついた俺は身体を起こして「文句あるか?」と開き直った。 「俺はああいう硬派で、バンカラで男らしい人が理想なの。ずっと女扱いされてた反動でさ。だからホストみたいな格好をしたり、飾りをぶら下げたり、ホモを装って女ともチャラチャラするようなナンパ野郎は願い下げ。婚約者だなんて、つまんねえデマを言いふらすな! わかったか、肝に命じておけよっ!」  俺は精一杯の皮肉を込めたが、しかし、俺に好きな相手がいると──それも男の──判明した時点で失恋決定のはずなのに、聖爾は妙に落ち着き払っていた。 「バンカラが理想ねえ。ちょっと堅物で偏屈な感じもするけど、彼がイイ男なのは僕も認めるよ、さすがにお目が高い」

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