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勃発! 合奏バトル 10

 最後の一言は俺に向けられたものだが、土方さんは自分が侮辱されたと思ったらしい。 「……いいだろう。受けて立とう」  切れ長の目が鋭い光を帯びて、その気迫、凄まじさに圧倒された俺は何も言えないまま傍らの土方さんを見上げ、そんな俺の様子に不安を感じているのではと思ったのか、彼は慈しむような眼差しを投げかけた。 「あなたの名誉は自分がこの手で守りますから、どうか信じてついてきてください」  こいつは夢か幻か? 勇敢で見目麗しき騎士と、そんな彼に守護されるお姫様。ファンタジーワールドが脳裏に広がり、俺はそのヒロインになったような錯覚に陥った。  それにしても、まるでプロポーズのような土方さんのセリフに、一生ついていきますとどんなに返事をしたかったことか。誠さんと呼んでもいいですか?  俺たちが承諾したのを見届けた桃園恭子が「あちらはいいみたいよ。さあ、これで協力する気になってくれたかしら?」と聖爾に念を押すと、ヤツは憮然として答えた。 「……わかった。それじゃあ練習を始めよう」  こうしてコンテスト騒動に端を発した二組の合奏バトルの幕は切って落とされた。

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