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誠さんと二人きりで……? 6
しかし、和室の使用日も時間も限られている。俺は思い切った考えを提案してみた。
「ウチで練習しませんか? 母と祖母が生田流の教室やってるんで、場所はありますから」
誠さんははじかれたように顔を上げ、その表情には戸惑いの色が浮かんでいた。
「……いや、でも、自分のような者がお邪魔したのでは失礼かと」
最初は遠慮していたが、もう一度俺が勧めると乗り気になったようで、彼とは今週末の日曜日に綾辻家で練習する約束をした。
やった! 誠さんとデート、って、練習するだけなんだけど。
わーい! 二人きりだ、って、場所は俺の家、バアさんとカアさんがいるけれど。
この約束を耳に挟んだ者がいたとは気づかず、待ちに待った日曜日がやってきた。ウキウキ、ワクワク、ソワソワ、朝から落ち着かない俺を見て、御袋は「何やってるの?」と不審の目を向けた。
「いいから気にしないで。お昼に稽古場使うけど、いいだろ」
「あら、熱心ね。やる気満々じゃない」
三曲同好会の活動を始めてから、家での稽古にも復帰し、参加するようになった俺に祖母も御袋も大喜びだったが、同好会に聖爾がいること、ヤツが院生として在学していることは伏せておいた。
ましてや学園祭で女装をして箏を演奏する、なんて話を耳に入れるわけにはいかない。御袋がノリノリで観に来るとわかっていたし、聖爾との御対面にプルプル女が絡んだりしたら、最悪の事態になるのは目に見えている。
同好会の先輩が来るから失礼のないようにと言い渡してしばらくしたのちに、呼び鈴が鳴った。
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