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いよいよ本番……絶体絶命、大ピンチ! 1
泣いても笑っても今日が本番、学園祭最終日・コンテスト当日。開始時間は午後一時からだが、どこもかしこも朝からその話題でもちきり。各サークルの連中は気もそぞろで、屋台を出してもタコ焼きどころではない。
出場者は十二時半までに集合ということで、俺たちは会場となる、あの大教室の隣の教室に向かったが、これがミスコン出場者の控え室とは思えないほど様々な人たちが集まっていて、男の参加者も意外に多く、赤木が話していた食堂のオバちゃんの姿もあった。
一週間前に抽選で決められていた出順を再度確認のあと、注意事項が言い渡されて、出番の早い者から準備に取り掛かる。
聖爾たちは出場者二十三組のうちの十七番目で、誠さんと俺の組は二十番目。準備をする余裕があるのはいいが、長時間待つのはけっこう辛いし落ち着かないので、調絃を終えた箏を壁に立てかけてから、俺は会場の様子を覗きに行った。
この教室は大学主催の講演会などにも使われるせいか、それなりの設備がある。教壇が置かれていたスペースは舞台に早変わり。その両脇にはスポットライトがセットされていて、もちろん天井にも大きなライト、舞台の後ろや左右に黒い幕と、一端のコンテスト会場に見え、なかなか本格的だ。
最前列の席はスタッフ、その後ろが審査員で、各学部の教授たちから学生協を取り仕切る事務のオジさんまで、公平な審査のために、各サークルとは関わりのない大学関係者が選ばれて座ることになっていた。
講義中のいつもの位置、後ろの方の席に腰掛けた俺は忙しく走り回る実行委員の連中や、開場早々に観客用の席取りを始めた学生たちの姿をしばらくぼんやりと眺めていた。
演奏は成功するのか、そして入賞出来るのか。婚約の件は、俺と聖爾、そして誠さんとの関係はどうなってしまうのか……
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