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いよいよ本番……絶体絶命、大ピンチ! 2
いつの間にか俺の周りの席も学生たちで満杯になっていた。いよいよ開始時刻、学園祭実行委員長兼コンテスト実行委員長の挨拶が済むと、司会者の合図と共にエントリーナンバー一番が登場した。
「あ、美佐緒さん。ここにいたんだ」
振り返ると、俺を探していたらしい聖爾が近寄って来るのが見えた。
「着物が届いたから、中身を確認してみて」
「う、うん」
衣裳については聖爾に任せきりで、すっかり忘れていた俺は慌てて立ち上がると、彼のあとを追って控え室へ戻ったが、そこにいた見覚えのある人物はなんと御袋で、笑いながら俺を睨む真似をした。
「着付けをして欲しいって、この前ウチにいらしたとき聖爾さんから頼まれてたのよ」
げげっ、いつの間に。気がつかなかった。
「美佐緒さんも人が悪いわね。聖爾さんが同じ大学にいて、一緒に演奏会に出るって、今までどうして教えてくれなかったの?」
「……演奏会じゃねえよ」
ミスコン、ミスお笑いコンテストだって。御袋には知られまいと思っていたけれど、着付けをしてもらうとなれば話は別。腕はたしかだし、慣れた相手だから気も楽だ。
「まあまあ、その話はさておいて。これを見てください」
そう促した聖爾が大きなダンボール箱を開けてみせると、その中には華やかな、色とりどりの生地と様々な小道具が入っていた。それは彼が知り合いの貸衣装屋から借りてきたものだが、滅多に貸し出す機会はないと思われる十二単衣セットだった。とはいっても、十二枚の着物を重ねて着ようものならとうてい身動きがとれないので、実際には三枚ほどで、重ね衿を使って工夫し、たくさんあるように見せかけている。
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