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いよいよ本番……絶体絶命、大ピンチ! 3

 誠さんに用意されたのは束帯だか布袴だか、とにかく二人並べば雛人形のお内裏様、と想像してもらえればいい。なるほど、これなら女装としてのインパクトは強いだろう。 「あらまあ、素敵じゃない」  そう言ってはしゃぐ御袋は紅梅の色をした着物を俺の肩の辺りにあててみた。 「鬘もつけてお化粧もして、となると、結構手間がかかるわね。早目に顔を洗っておいてちょうだい」  御袋が今度は誠さんの方を向いてこれからの準備の話を始めると、俺は満足気にたたずんでいる聖爾に向かって訊いた。 「どうして、ここまで親切にしてくれるんだよ? 俺はあんたに……」  硬派でバンカラな誠さんが好きだ、軟派野郎は及びじゃない、などと言ってしまったではないか。それは聖爾にとって酷い仕打ちだったのではないのか。  だが、彼は「同好会の仲間同士、協力するのが当然でしょう」と答えた。 「そりゃそうかもしれないけど……」  それだけ? 本当にそれだけなのか。 「さあ、僕も仕度を始めなきゃ」  口ごもる俺をよそに、聖爾はいったん行きかけて、こちらに爽やかな笑顔を向けた。 「お気に召してもらえて良かったよ。今回の衣裳のテーマはかぐや姫だからね。スタッフにもそっちの方向で演出してもらえるよう、頼んでおいたから、そのつもりでいて」 「わ、わかった……」  十五年前の遠いあの日、彼が出会った御転婆で泣き虫のかぐや姫はたった一言の「ありがとう」も言えないままだった。

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