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いよいよ本番……絶体絶命、大ピンチ! 4
控え室には一種異様なムードが漂っていた。皆それぞれ扮装に凝るのはいいが、男共の中には女装というより仮装になっている者が多く、女たちも負けじとばかりに、奇抜な格好で対抗している。ミス・名物美人はミス・仮装大賞かも。以前聖爾が言ったように、これでは振袖程度で太刀打ち出来るはずがない。
チャイナドレスの女格闘家、あれはゲームのキャラクターのマネだろうか。こちらはフリルがいっぱいついたミニのドレスに魔法の杖。アキバ青柳が泣いて喜ぶ、アニメの美少女ロリコンキャラに違いないとみた。
ほとんどコスプレ会場と化したその場所で、「ほら、見て見て!」とはしゃぎ声を室内に響き渡らせているのはもちろん桃園恭子、銀ピカに光る衣裳を着て御満悦だ。ボディコンシャス、っていうんだっけ、身体にぴったりとフィットした銀の服は胸元が大きく開いて、谷間を強調するようになっている。ミニスカートから伸びた足にはこれまた銀のブーツ、頭にカタツムリの角みたいな飾りをつけて、その先にはピカピカと赤く光る豆電球。何とも奇妙な格好だが、これぞ宇宙人スタイルだそうだ。箏を演奏するのに、どうして宇宙人なのかは不明。
「アンタの知り合いにコスプレマニアがいるでしょ、宇宙人をイメージした服を貸すように言いなさいよ、って脅されたんだよ」
赤木と一緒に、控え室の様子を覗きにきたウワサの青柳がそう言ってボヤいた。あの銀ピカ衣裳は青柳の仲間の所有物らしいが、普段使用されている場面は想像したくない。あまりのギラギラぶりに、俺は秋になると御袋がよく作ってくれる、しめじと鮭のホイル焼きを連想してしまった。
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