102 / 120
ミスコン終了 それマジっスか? 4
「箏がライトの傍にあったなんて、誰も言っていないし、僕は二人に在り処を訊くまで知らなかった。どうしておまえはそれを知っているんだ?」
かぐや姫の物語は名探偵・豊城聖爾の謎解きシーンに早変わり。誰それの名にかけて、なんて言い出しかねない雰囲気だ。ホイル焼き女の顔がみるみる青ざめてきた。
「だ、だって……悔しかったのよ、この子の方が上手に演奏するの、わかってたんだもの」
シーンと静まり返る会場、こんなに大勢の人の前で罪を暴かれ、涙ぐむ桃園恭子が憐れに思えてきた俺はもういいよ、と言いかけて「もうよいではありませぬか。罪を認めた者をこれ以上責める必要はないでしょう」と言い直した。自分がかぐや姫役であることを忘れていない俺って、いい役者になれるかも。
「これからは二度と楽器を傷つけるような真似はしないでください。箏はわたくしの大切な友なのですから」
我ながら感動的な名ゼリフ、そいつをアドリブでこなす俺を感心したように見ていた聖爾もこれまた芝居の続きを始めた。
「姫、それではまいりましょうか」
俺の手を取る聖爾を見た誠さんは慌てて「どこへ行くのですか?」と訊いた。
「私は月の世界から姫を迎えにきた使者です。残念ですが、貴方と姫は結ばれない運命、潔く諦めてください」
バックミュージックが次第にフェードアウトし、ライトも消えて、割れるような拍手と共に寸劇の幕は閉じた。
ともだちにシェアしよう!