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第62話

  「大丈夫か。できるだけゆっくりやるが、痛かったら遠慮せずに言ってくれ」 「よけいな気づかいは無用です。もったいをつけずに奥までいらしてください……」  つんと顎を反らすと、挑発的に腰をくねらせる。  どこの誰に教わって、こういう誘い方を憶えたのか。一回こっきりと割り切っているのに恋愛遍歴にこだわるのは、滑稽だ。  天音が千人の男と寝ても、わたしの関知するところではない。だが、天音の上を通りすぎていった男たちが妬ましい。そいつらのイチモツを一本残らずちょん切ってやりたいほどに。  ともあれ、この媚肉は、現在(いま)はわたしに食らい尽くされるためにある。  雄を押し返す蠕動に逆らって、ひと襞、ひと襞切り拓いていく。当初は慎ましやかにあった秘孔が、ギャザーが伸びきるほどに拡がって、なよやかに砲身を銜え込んでいくさまは(みだ)りがわしいのひと言に尽きる。  やがて、すべてが収まった。途端にむずかるように襞がさざめいて、もっちりとわたしを包む。きつい。女性器のそれとは異なるきつい締めつけに、頭の芯が痺れた。 「どうぞ、遠慮なさらずに。めちゃめちゃに犯って、おれで愉しんで……」 「そんなに、せっつくな。いいか、今日のところは俺が主導権を握らせてもらう」  テーブルの上を探って眼鏡をたぐり寄せた。かけて、まじまじと谷間に見入る。退いてみると、襞がしなしなとまとわりついてくる。押し入ると、うねうねとつぼむ。比類のない名器だ。  哲也が執着するのも、うなずける……手始めにあの青年を血祭りにあげてやりたい。  律動を刻みながらこれをいじってやれば、どんな反応が返ってくるのだろう。試しに乳嘴を揉みつぶすと、内がわたしの形に狭まって淫らに咲き匂う。前哨戦のような抜き差しを繰り返すにしたがって、ふたりの呼吸が次第に合ってくる。 「あっ、ん、そこ、気持ち、いい……ぁ、ああ、あー……っ!」  幽体離脱を経験しているようだ。もうひとりのわたしが、獣の姿勢で烈々とつがうわたしを俯瞰する位置から冷ややかに見下ろしている気がする。  義弟と一線を越える、それは罪深い行為だ。だが、それに照準を定めて核心を突きしごいてやれば甘やかにいななく天音が、愛おしい。 「あっ、突いて……もっと、突いて……っ!」  明るいのはいや、そんな体位はみっともない──何かと注文が多い里沙とのセックスに、わたしは知らず知らずのうちに不満をつのらせていたのかもしれない。  内奥を攪拌するたびに狂おしげに髪を振り乱すさまを目の当たりにすれば、男冥利に尽きる。

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