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第39話【R18】

「これ、中に塗ったらいいのか?」  暁人の手からワセリンを取ると、中身を手のひらに出してみる。常温で置かれていた保湿剤は柔らかく、体温に溶かされてすぐに緩くなっていく。 「んッ、っっ」  恐る恐る後ろにワセリンを塗りこめていくと、弾みで指先が中に入り込んだ。痛みを感じるほどではないが、頭では理解していても身体の方が驚いてしまう。ひくひくと蠢く内臓の動きに怯んでいると、止まってしまった指に添わせるようにして暁人の指が一本入ってくる。 「っあ、ふ」 「大丈夫だから、力抜いて」 「ンぅ、っあ、あ」  口で言っても上手く出来ないこちらの気を逸らそうと、一度出してまだ萎えている性器を抜きあげられる。直接的な刺激に反射的にのけぞると、ずるりと指が奥に侵入してきた。  ぬぐい切れない緊張と恐怖心から、短くなる呼吸が耳にうるさい。いっそ無理やりにでもしてくれと無責任なことを思いながら、慣れない感覚を逃すように側にあった枕引き寄せて噛み付いてみる。 「大丈夫、痛くない?」 「ッッたく、な、い、ぅあッ」  ぐるりと中を拡げるような動きが、一瞬だけ浅い場所にある前立腺をかすめて痺れが走る。  しかし慣れていないという言葉は本当なのか、暁人の指は数を一本増やしてからも、気付くことなくまた奥を探っていく。  かつて知ってしまった感覚だけに、じりじりとした焦燥感が中から湧き上がる。そこが気持ちいいと言いそうになって、慌てて歯を食いしばった。 「あっ、ッやぅ、もっあき、とッ」 「もう……ちょっと、ね。はぁ、やっばいな、陸ん中すごい……熱くて、ぬるぬる動いて俺の指に吸いついてくる、エロ……い」 「っひ」  嫌なことを言うなと抗議したいのに、増やされた指をばらばらに動かされて声も出せない。時折り中から溢れ出てくるのは、塗り込められたワセリンが溶けたものだろうか。  恥ずかしすぎて耐えきれないと逃げかけると、余計に押さえつけらた。決定的な刺激が与えられないせいか、ドロドロに溶かされていく脳がうまく働かなくなっていく。  耳元で聞こえる荒い息が、自分のものなのか暁人のものなのか判別がつかない。念入りに解す行為に全身が脱力し、がくがくと足が震え出した所で、ようやく内部を弄っていたものが出ていく感覚があった。 「陸、大丈夫?」  こちらを気遣うような声がしたかと思うと、大きく割り開かれた奥の奥に、指よりずっと太くて熱をもった肉が擦り付けられる。ぬるぬると何度も入口辺りを行き来するそれに、ぶるりと大きく背筋が震えた。 「っあ、あ、んんッ、ふぅっ」 「りく」 「あ、あき……っと、ぅあ、ああッ」  ゆっくりと侵入してこられると、異物を拒もうとする腸壁の動きで暁人の形が伝わってくる。深く中に押し入られると、そのままどろどろに溶かされた陸の中身が出ていくようだ。  なんとか開けているはずの視界は、ぼやけていてよく見えない。すぐ側にあった肩に縋り付くと、強く抱きしめられて暁人の匂いがした。良かったと安心してさらに密着すると、低く押し殺した声がすぐ側から聞こえてくる。 「はっ、い……たく、ないかな。おれ、ちょっと……わけ、わかんなくなり、そ」 「あっ、あ、あ、まっ……て、ふかッい」  やたらと丁寧に準備を施されたせいか、身体の深くまで入り込まれた感覚が辛い。浅い場所にある前立腺を擦られる快感は知っているが、それとは少し違う、身体の芯から湧き上がってくるような微かな刺激に震えが止まらない。 「りく、うごくッね」 「ッう、ゃ、だめ、まだっだめ、だ、まっ……てぇ」 「うぁ、ッめんごめん……とめらんっない」 「ひぅッ、あ、っひ、あ、あ、ああッ」  ぐっと両脚を持ち上げられたかと思うと、駄目だと言っているのにさらに深く抉られて息がつまる。折り畳まれるような姿勢を恥じる余裕もなく、閉じられなくなった口から意味をなさない単語と唾液だけが溢れていく。 「りく、りく、かわいい、ッもちいいかな、おれちゃんと、できてるっかな」 「やッ、まっまて、やらっ、あッッめ、だめっ」 「ぅあッ、にこれ、ふっ……んッ」  ずっと奥にあるなにかを超えられて、たまらず背が反り返って全身ががくがくと震える。入ってはいけない所まで犯された感覚についていけないのに、そのまま深く打ち付けられて声にならない悲鳴が漏れる。 「っめ、ぅあう……っあ、あきッ、あぁっ」 「ん、ッごい、りく、りく嫌がらないで、あっ、もちいい、すごく気持ちいい、りく、すき、すきだッ」  気持ちが良いのかすらも分からない感覚に翻弄されながら、好きだと繰り返す暁人の顔を引き寄せて唇を合わせる。  怖いくらい深い場所にまで暁人受け入れて、唾液から体液から全部混じり合ってぐちゃぐちゃにして、こちらも好きだと繰り返す。  何がなんだか分からなく時間はどれくらいだったのか。ふと飛んでいた意識が戻ると、身体の奥がじわりと濡れるような感じがした。  直接中に注がれる熱が、恥ずかしいが嬉しい気がしてしまう。こちらを抱きしめて荒い息を繰り返す頭を撫でまわすと、身体を起こした暁人にキスをされる。  いつの間にこちらも果てていたのか、腹部から自分の精液が伝い落ちていくのが分かった。くらくらと後を引く快感にまだはっきりしていない意識が、ぼんやりとそれを他人事のように感知する。 「ごめん。途中からなんか、わけわかんなくて」 「だいじょ……ぶだ、でも……も少し、こうしてて」  色々と気にもなるが、まだ全身に力が入りそうにない。汗の浮いている暁人の背中に手を回すと、顔中のあちこちに唇を押しつけられる。  嬉しいと小さな声で言われて、不覚にも泣きそうになった。

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