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さて、暫く歩いてようやくミーティングをする教室についたので空いている席に座る。
遅れてしまったことを軽く詫びると、部長が眉を下げて優しく笑った。
「律と優馬が遅れるなんて珍しいね。忘れてた?」
「忘れてた。ごめん」
「全然いいよ。今から始めるところだったし。じゃあ、ミーティングを始めます」
部長でもあり、俺の親友の橘 爽介 がそう言ってミーティングを始めた。
もう三年生はとっくに引退しているので、部長は二年生だ。
……ちなみに、バスケ部。
俺はバスケ部の中では身長は伸びなかった部類だが、爽介も優馬もかなりの高身長。
このふたりに挟まれたら間違いなくチビと思われることだろう。
俺も……そんな、チビってわけじゃないんだけど……
爽介は、優馬とは違ったタイプのイケメン。
甘めな系統の顔をしており、性格も優しい。体格がかなりいいと言うわけではないけれど線が細いというわけでもない。
言葉遣いも柔らかく、頭だっていい。
それでいてバスケをする時はセンターで、チームが勝てるように司令塔としての役割をちゃんとこなしている。
バスケをする姿がかっこいいのなんのって。
よく女子がキャーキャー言いながら練習試合や練習風景を見に来るけれど、ほぼ優馬と爽介が目当てだと思う。
あれ、俺の周りにはなんでイケメンしかいないんだろう。目からなにか出てきそうだ。はは。
頬杖をついて爽介の話をぼーっと聞いていると、隣に座っている優馬がちょいちょいと俺の肩をつついてきた。
「なに?」
小声でそう言うと優馬が俺の耳に口を近づけて。
「なんか今日、爽介機嫌よくね?」
「……やっぱり?」
機嫌がいいというよりは雰囲気がいつもよりもほわほわしているというか。
普段は部活のときならば纏っているオーラは少しだけ冷たくなるが、一年生の後輩もいる中でここまでほんわかとした爽介を見るのは初めてかもしれない。
なにかあったのだろうか。
「……彼女でもできたか?」
「かもね」
優馬の弾んだ声を耳元で聞きながら、俺は肩を竦めながらそれとなく同意しておいた。
爽介に彼女か。
なんとなく今はそういう話題は避けたいところではあるな。
なるべくそのような会話に発展しないようにしないと。
「こら。そこのふたり、会話ならミーティングの後にね」
「さーせん」
「はーい」
少し緊張していた一年生たちが俺と優馬の気が抜けた返事に少しだけほっとしたような顔をしていた。
すると優馬がこれが狙い、とばかりに爽介に向かってドヤ顔をかましていた。
爽介は軽く優馬のことを睨んでいた。
まあ、ミーティングに集中するとするか。
「ミーティングはこれで終わり。このあとは体育館で自主練」
その爽介の言葉によって、各々が解散する中爽介はこちらに向かってきた。
それを確認した優馬が立ち上がって荷物を持つ。
「じゃあ体育館行くか」
「うん」
この高校のバスケ部は強豪といってもおかしくはない。
県の大きな大会では毎年上位に食い込み、インターハイ出場の一歩手前までいったことがある。
俺を含めたこの三人は去年ベンチで控えていたメンバーであり、勿論試合にも出たことがある。と言っても、たくさんではない。
一年の中で唯一ベンチで控えていたメンバーであり、二年になってからの背番号はかなりいい番号を頂いています。
夏の大事な大会が終わって先輩は引退し、直近で大きな大会がないため練習漬けになることはないけれど、自主練だからといって気は抜けない。
レギュラー落ちだとかは勘弁だ。
かなり多くの部員が自主練をしていくため、ほぼ普段の部活と何ら変わりはないけど一応自主練ということで。
バスケは楽しいから好き。試合でシュートが入ると尚更楽しくなって好きになる。
「先輩! 今日一年生と二年生でチーム組んで対決って本当ですか!?」
ふたりの一年生が俺と優馬に向かって生き生きと話しかけてくる。
まだしっかりとした体つきではないものの、入りたてに比べたらかなり筋肉がついてきている。
そういう俺もまだまだだけど。
「らしいな。どうしたおまえら自信あんのか?」
「先輩たちに何回も負けてられないんで、それなりにはありますよ!」
「中々言うじゃねえか。やってやるかー、な、律」
「勿論」
「先輩怖ー」
男子高校生なるもの、もれなく勝負事には弱いタチでして。
優馬と一年が楽しそうに話しているのを眺めていると、いつの間にか体育館についた。
バッシュに履き替え、三階建てとなっている体育館の二階へ移動する。
学業だけでなく運動部に力を入れている高校な分、施設の設備の良さが半端じゃない。
制服から運動着に着替えようとすると、肩をぽんと叩かれた。
その相手を見て、俺は軽く言葉に詰まる。
「爽介……」
「律」
相変わらずキラキラとした空気を纏っていて、うっと息が止まりそうになる。
そのうち身体がLEDみたいに発光するんじゃないかって時々思う。
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