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「律、昨日からよそよそしいな。そんな対応されたらさすがに傷つくんだけど?」 「だって、あんなことがあったら……」  俺の親友とは、爽介のこと。  つまり、俺が自殺未遂をしようと思った出来事は爽介との間に起きたのだ。  だからこそ気まずくて、爽介のことを避けてしまったりした。今となってはものすごく申し訳ないと思ってる。 「あんなこと? ……ああ」  ピンときていなかったようだけれど、すぐに察していつもの優しい笑みを顔に浮かべた。 「別にそれが俺の大恋愛だったわけじゃないし、その子が律のこと好きだった程度で律のこと嫌わないよ。俺は気まずいとは思ってなかったし」 「……え」 「それに、知った時ショック受けなかったしさ。好きじゃなかったってことだよ」  驚いた。  俺はすっかり、爽介はショックを受けていると思い込んでいたから。    固まっていると、爽介はそんな俺を見て苦笑する。 「あと俺、もしかしたら好きになれる相手かもって言わなかったっけ。その時点で好きって確定していたわけでもないよ」 「あ、そうだった……」 「ちゃんと聞いてなかった? そっちのほうがショックだなー」  ばしんと笑いながら背中を叩かれた。  内容があまり入ってこない。  そうか、俺は勝手に思い込んで自己解決してただけなのか…… 『そいつ、おまえの親友なんだろ? だったらそんなことで傷つかないんじゃねえの』  怠慢教師のそんな言葉を思い出す。  まさにその通りだった。  それどころか、俺がしっかり話を聞いていなかったことをショックだと言うだなんて。  恥ずかしい……色々と思い違いをしていたみたいだ。 「律、恋愛慣れしてないんだろ? 可愛いなあ俺の親友は」  ぐしゃぐしゃと頭を適当に撫でられる。  俺の親友、と言ってくれたことが何気に嬉しくてにやにやしてしまった。  たぶんこんなだらしない表情は爽介には見えていない。見られていたらかなり恥ずかしいけれど。 「でも、律の様子が変なのってそれだけなわけないよな。なんかあった?」 「……それが」  ごにょごにょと、俺の好きだった子……望月さんが爽介のことを好きだと言っていたことを拙いながらも伝えた。  すると、最初はぽかんとしていた爽介の顔が段々おかしくて堪らないという風に歪んでいき、しまいには大笑いへと変わっていった。  笑われたことに羞恥を覚えながらも、俺はなぜ笑うんだと訴える。  目に涙を浮かべた爽介が、ひーひーと呼吸を整えてから俺に説明をした。 「なに、教室で橘くんのこと好きになっちゃったー! って騒いでて勘違いしちゃったの?」 「笑うなって……」 「この学年さ、橘ってふたりいるんだよね。しかも俺とは漢字が違う立花っていうの。だから俺、今のクラスの奴ら全員から下の名前で呼ばれてんだよ」  ……なんだって? 「律の好きなひとがほかの男のこと好きだったのは気の毒としか言えないけど、その男は俺ではないよ」 「それ本当? 俺のことを安心させようと思ってついてる嘘ではなくて?」 「ほんと。信じてくれない? 親友なのに?」  捨てられた子犬のようなきゅるんとした目で訴えられて、信じられないと言える人間がこの世のどこにいようか。いや、いない(圧倒的反語)。  待てよ……今までの話が本当のことなら、俺は盛大に勘違いをしていたんじゃ……

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