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「……ごめん西田」
「俺、律先輩と同じポジションですよー!? 何回も一緒に練習してるのになんで間違えたんですかー!!」
「律はほんっっとうにひとの名前を覚えられないな」
爽介に言われてしまった……
西田(と他のふたりの名前なんだっけ)たちが少しショックを受けたように騒いでいた。
俺の彼女の有無はどこいった。
「で、結局彼女いるんすか?」
「いないよ」
「まあひとの名前覚えられないんじゃそりゃな……」
「……」
西田じゃない、ちょっとイケメン気取りの奴にそう言われた。
こいつ、顔覚えたぞ。今日のミニゲームこてんぱんにしてやる。
するとどうやら興味は爽介に移ったようで。
「じゃあじゃあ、爽介さんは?」
「俺もいないよ」
一年の勢いに、やや気圧されるように仰け反りながらそう答えていた。
どちらかというと、爽介よりも優馬の方が元カノの人数は多かった気がする。
爽介の方が優馬よりも若干人気だけれど、爽介は割とガードが堅い。
と、いうのも。
「えー、爽介さんめっちゃ男前なのに」
「俺は好きな子としか付き合いたくないからね」
「……惚れていっすか」
「かっけぇ……」
女子が見ていたら倒れてしまうんじゃないかというくらいの笑顔で爽介は言った。
好きではない子に告白されてもほいほいオッケーするような男ではなく、自分が好きになった子としか付き合えないのだという。
昔っから変わらない。
普通それだと彼女ができないような気もするけれど、爽介ならどんな子でも落としてしまうから気づいたら付き合って一ヶ月経ってた、なんてことは中学時代よくあった。
すげえよまじで。
「爽介さんたちって優馬さんとも仲良いですよね? 優馬さんはどうなんですか?」
「あー、あいつは二年になって二週間くらいで別れたよな」
「それで別の子と一ヶ月付き合って別れてる」
「え、優馬さんやべえ。モテモテ」
優馬は来る者拒まずなところがあるからな……
この前なんて「俺が可愛いって思えるポイントがひとつでもあったらオッケー」とか言ってた。
それでも優馬の歴代彼女は全員顔がいい。
そういう女子にモテるのか、優馬に告白するような子は自信があるからなのかわからないけれど。
ふたりが恋愛経験豊富な中、俺は付き合ったことはまだない。
……なんて言ったら後輩に馬鹿にされそうだ。
「ちぇー、律さんの恋バナ聞けると思ったのになー」
「そんな聞きたいの?」
「勿論。気になりまくりっす」
「なんでだよ」
「なんでって……なあ?」
後輩たちがちらっと目配せをして、内緒話をするように小声で顔を寄せてきたから、応じるように耳を近づける。
爽介も釣られて俺に顔を寄せてきた。
「毎日色気ダダ漏れで部活くるから、気になるに決まってるじゃないすか」
「っっ、馬鹿!!」
ぺしーん!! と頭を叩く音がその場に響いてしまった。
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