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シェイクをずこーと吸いながら優馬がスマホをいじっていた。
恐らく爽介にノートを見せろという旨の連絡をしているのだと思う。
優馬はこれでもマナーは一応ちゃんとしてるから、食事中にスマホを触ったりすることは滅多にない。
だから少し珍しいようにも思えるけど、それくらい焦ってる……のか?
「テストとかまじで無理。あんなもんするくらいならシュート100本打ち込みの方が断然マシ」
「勉強すればいいだけだよ。優馬はやればできるんだから……」
「やだやだー俺はできるだけ楽しく生きたいのー」
楽しい高校生活を送るには勉強も必要だぞ、とは言わないであげよう。
こいつはなにかあったら小さな子どもみたいに半べそ状態でいちいち報告してくるから、たまにイラッとしたりもする。
けど、やっぱりどうしても無視はできないし、寧ろそんなに感情を惜しみなく出せることがある意味羨ましくもある。
優馬と俺は、ほぼ対極と言ってもいいと思う。
明るいと言われる優馬と、冷めてると言われる俺。
馬鹿な優馬と、勉強はまあまあの俺。
フランクな優馬と、極度の人見知りの俺。
バスケの面で気が合わなくなったことは一度もないけれど、こんなに共通点が少なくてよく仲良くできるよなあ、と何度も思う。
実際、優馬が俺に対してなにを思っているのかは知らないけど。
「そもそもさ、勉強してて楽しい?」
「楽しいとは思わないよ。俺勉強嫌いだし」
「うえー、ドMすぎ」
「この程度ドMでもなんでもないわ」
やりたいかやりたくないかではなくて、やらないといけないからやっているだけだ。
それ以外に特に理由はない。
強いて言うなら、テストでいい点が取れたとき嬉しいから。それくらい。
「学生の俺たちにとって勉強は必要不可欠だろ。だから俺はやってんの」
「別にやってなくても生きれるよ? 見てみな、この俺を」
「近くで見てたら嫌でもわかる。馬鹿すぎて慣れた。あとドヤ顔すんな」
二年になって最初のテストなんて、赤点を連発して取っていたからさすがに驚いた。
一年の頃はそれなりに点が取れている教科もあったはずなのに、おかしい。
優馬の生活を思い出してみて、そこではっとする。
────そういえばこいつ、まあまあ頭いい女子と付き合ってる時はそれなりの点数取れてたんだった。
優馬は彼女に影響されやすい。
だから、二年の最初に付き合っていた女子がかなり馬鹿だったということなんだろう。
なんだこいつ、単細胞すぎないか。
頭が馬鹿な部分を除けば本当に完璧なのに……
いや、まあ完璧すぎてもこっちが困るけど。
「律はさあ、考えすぎなの。もっと感情の赴くままに生きてみろよ。世界広がるぜ」
「……俺は今のままで満足してる」
「そんなこと言わないでさ。別に律の世界が律だけで完結できるわけじゃねえんだぞ。律じゃない他の誰かの手助けで、もっといい結末を迎えられるかもしれないのに」
……優馬。
「え、今の俺めちゃくちゃかっこよくね!?」
「黙れよ」
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