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適当に話をしながら、廊下を歩いていく。
その際、何人かの生徒とすれ違う時に先生は話しかけられたり、親密な様子で挨拶をしていた。
「せんせーやっほー」
「おー、スカート折りすぎんなよ」
「ちょっと、どこ見てんのー」
「俺みたいな変態がいるかもしれないんだから気をつけろってこと」
きゃっきゃ言いながら3年の先輩方が通り過ぎていった。
たしかにスカートはかなり短かったけど……そういうのが多少容認されているのも偏差値がいい高校の特徴だったりもするのかもしれない。ある程度校則は緩い。
でも、こうやって生徒と挨拶を交わしているのを見ると、やっぱり人気な先生なんだなあと思う。
そりゃ、顔だけ見ればかっこいいしよくないところを探す方が難しいけど、俺からしたらちょっと……
(このひとには敵わないって思っているからこそ、このひとには懐けないと思う)
「……あ」
前方から、何日か前に呼び出された梨奈ちゃんが歩いてきた。
友達と一緒に。
結構早い段階で目が合ってしまったから、今更逸らすのもなんだか申し訳ない。
今日は、長い髪を高い位置でひとつにまとめた髪型をしている。似合っている、とは思う。
「さ、さようならっ」
梨奈ちゃんから先に声をかけてきた。
……俺から声をかけようと思っていたけど、先手を取られちゃったか。
いつもならどう返そうかな、とかあのひとの名前なんだっけ、とか色々考えてしまって無視してしまうようになるけど、今日はちゃんと返そう。
「じゃあね」
胸元で左手をひらひらと振り、自分ができる最大限の愛想笑いをしてみる。
すると、梨奈ちゃんはみるみるうちに顔を赤く染め、「ぴゃっ」と不思議な声を上げてからさーっと走っていってしまった。
……え、俺失敗した!?
呆然としていると、隣でその様子を見守っていた先生がクスクスと笑い始めた。
おい笑い事じゃねえ。
「……俺、なんか悪いことしましたかね」
「いや、今のはどっちかと言うと照れたって表現がぴったりじゃねえかな」
「はあ? 俺に?」
「そ」
照れる要素があったとは思えないけど……先生がそう言うならそうなのかもしれない。
「なあ」
「はい」
「俺さ、この前微笑んだりしたらどうだって言ったの覚えてる?」
この前……あ、中庭でのことかな。
「覚えてます、けど」
「やっぱりあれ撤回していい?」
「へ、なんで」
「微笑むようになったら急にモテモテになっちゃって俺が付け入る隙がなくなりそうだから」
モテモテ、って、俺が?
しかも、先生が付け入る隙がなくなりそうって……
「俺がモテモテなんてことないと思いますけど」
「実は先生もそう思います」
「……さすがに今のは俺でもかっちーんって来ますよ」
すると、先生がぷっと噴き出した。
悪かったな、子どもみたいな言葉使って。
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