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とりあえずなんとか笑いは抑えたので、お買い物かごを持って野菜コーナーで物色する。
キュウリを買おうと思い売り場に行くと、安さに多少驚く。
俺が普段お世話になっているスーパーより何円も安い。
たしかに野菜は安めかも。
ふらっと周りを見るだけで、普段見る値札よりもかなり数字が小さい。なるほど、ここは食費を抑えたいひとに優しいな。
「作り置きしたいんなら、ミートソースとかトマトソースとか割とおすすめ。温めるだけでパスタとかグラタンとかに使えるし。疲れてても温めることくらいはできるだろ?」
「はい」
「あとはやっぱり煮物とかだな。俺だったら────」
先生が口頭で簡単に説明してくれた。
食材への知識は普通の高校生に比べたらあると思うけどそれでも足りないので、先生に任せることにした。
嫌いな食材はあまりない、と言ったので先生も悩まずにどんどんと案をくれる。
けど、高い食材は決して選ばずに手頃な値段のものばかりを選んでくれる。
これは……
「先生便利すぎる……」
「だろ。料理してやるから俺の事飼う?」
「やだ」
それとこれとは話は別だ。
とは言え、本当に役に立つことばかり教わる。
酢を使った料理が日持ちするとか、時間がない時のためにおにぎりに入れる用の具材を作っておいた方がいいとか、すぐに使わない野菜や使い道が決まっている野菜は冷凍しても大丈夫だとか。
「おまえは部活もやってるんだし、腹が満たさればいいやとかじゃなくてできれば栄養素とかも考えた方がいい。バスケ部は特に運動がハードなんだから痩せる一方だぞ」
「う……は、はい」
「今でさえ細いんだから、せめてもうちょい筋肉つけろ。たぶんおまえなら綺麗に筋肉つくはずだから」
「頑張ります……」
筋肉つきにくい体質なんですよ、とは言わないでおく。
微かに筋肉量は増えてきたはずだし、ひょろいと言われることはそんなにないけどそれでも他の部員と比べると細い方。
けど、俺だって筋肉には憧れる年頃。
筋肉があったらちょっとかっこいいじゃんか。
「プロテインとか飲んでるの?」
「飲んでますよ。そうじゃないとせっかく筋トレしてもなんか筋肉つかない気がして」
「そうだよなー。ちょっと腹触ってみていい?」
「はい」
恐らく力んでいるとすぐバレるから、なるべく力を抜いていると先生がベストを捲り、ワイシャツ越しにぐっと腹を触ってきた。
「お、結構固い。頑張ってるな」
「見た目の割に固いでしょ」
「見た目薄っぺらいけどな」
「ちょっと……」
俺が少し気にしていることを言わないでほしい。
骨格や体質のせいなのか知らないけど、身体に厚みが一切ないのだ。
高一の頃に比べたらさすがに男らしい身体に近づいたけど、それでもやっぱり細い。
それに比べて先生は筋肉があるようには見えないけどひょろひょろはしていない。
見た感じ体幹もしっかりしてそうだし、学生時代にスポーツをやってたのかな、と思うほど。
「先生は鍛えたりしてるんですか?」
「んー、たまにな。触る?」
そう言われたら遠慮なんてせず、お腹を触ってみる。
すると想像してたよりも固くて、少し指を動かしてみると凹みすら感じた。
え、割れてる?
「……なんですかこの違い」
「たぶん体質。俺は皮下脂肪少ないから」
「だとしてもここまでの固さにはならないですよね……なんか俺が知ってる先生と程遠くて気持ち悪い」
脱いだらすごそうなんだけど。
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