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「あとはジムに行ってるからってのもあるかも」
「え」
「たまにな。学校帰りに行ったりとか」
なるほど。だからか。
家で軽く筋トレするくらいのレベルじゃないと思っていたから、納得した。
ていうか、学校で怠慢教師と呼ばれている先生はどこにいったんだ。
イメージと全然違うし、なにより矛盾点が多い。
「んー、こんなもんか。量的にも金銭的にも丁度いいだろ」
「ですね」
「じゃあ俺、外で煙草吸ってるから会計してきな」
「煙草やめたんじゃないんですか」
「……おまえがいるところでは吸わないよ」
ヤニヤニ……と呟きながら先生は出入口から出て行ってしまった。
あれは結構中毒になってそうだな。絶対将来煙草に手を出さないようにしよっと。
レジに買い物かごを持って行き、鞄から財布を取り出そうとしていると、40代くらいのパートの女の人が話しかけてきた。
「あらぁ、学生さん?」
「はい」
「あのイケメン先生と来てたでしょ。仲良いのねぇ」
「……そうですね」
ここで否定しても面倒だし、とりあえず肯定しておこう。
いや全然仲良くないという気持ちが表情に出ていないかが心配だけど。
「あの先生ね、滅多に来ないんだけど来た日は凄いのよ。お客さんもあんなイケメンいるんですねって言ってくるの」
「そうなんですか」
「そうなのよ。あなたも綺麗な顔してるから話題になりそうねぇ」
にっこりと笑いかけられながらそう言われ、つい戸惑って控えめに微笑むことにした。
綺麗な顔って言ってもなあ……俺、男だから綺麗って言葉はあまり似合わない気がするんだよな。
もちろん褒め言葉なのは理解しているけど、なんか変な気分になる。
「ね、あなた付き合ってる子はいるの?」
「……いえ。それがなにか?」
「よかったら私のお知り合いの娘さんと会ってみない? すごく可愛い子なのよ」
「すみません、そういうのはちょっと」
あー、またこの手の話題か。
顔が整ってるから娘を紹介したいとか、そういうことをしょっちゅう言われる。
家族に会うために実家に行っても、親戚はずっとその話ばかりしてくるからあまりゆっくりすることができなくてうんざりする。
去年の冬はそれが嫌で実家に帰りたくなくて、今年のお盆は絶対帰ってこいって親戚に言われてるし。
憂鬱なこと思い出したな……
「顔が綺麗なのはね、若いうちだけなのよ? どうせ年老いたらしわくちゃになるんだから。その前に可愛い子捕まえなくちゃ。私の知り合いの子はね……」
「じゃあ」
お金を丁度ぴったり出し、レシートを素早く受け取ってから言う。
「見た目じゃなくて中身で選ばないといけませんね」
見た目だけで全てを決めるなんて、そんなふざけた考え方あるもんか。
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