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 あー、別にこの店員さんは悪くないのに親戚のこと思い出してイライラしてきた。    さっさと食材をエコバッグに詰め、足早にスーパーから出た。  辺りを見渡すと、丁度煙草を吸い終わったと見られる先生と目が合った。  先生がひらひらと手を振ってくる。 「なんか機嫌悪い? どした?」 「いや、店員に色々言われて」 「あー、わかった。あのひとな。あのひと、若い男を見つけては娘勧めて、断られれば若い内にいい女見つけろとか言ってくるからあんま気にすんな」 「それでもちょっとムカつきました」  正直にそう言うと、先生は大きく笑って俺の背中をぽんぽんと叩いた。  客にああいうことを言うのって割と失礼な気がするんだけど。  おまえの顔がいいのは今だけだって言ってるようなもんじゃんか。 「大丈夫、気にしなくていいよ。どうせおまえは10年経っても20年経っても綺麗な顔のままに決まってる」 「その頃先生はおじさんですね」 「やめてください」  あからさまにしょげた先生を見て、つい笑ってしまった。    急にそんなことを言うものだから、先程言われた言葉が急にどうでもよくなってきた。  見た目で決められてついカッとなったけど、どうせ他人だし次このスーパーに来たとしてもあの店員がいるレジには絶対行かん。  ……ん?   なんで俺は、見た目のことを言われて腹が立ったのに先生に見た目がタイプって言われた時は腹が立たなかったんだろう。  侮辱してこなかったから? いやでも普段は見た目だけタイプとか言われたらかなりムカついている気がする。  つまり。 「先生はおじさんになってもイケメンな気がします。たぶん」 「え、今褒めた?」 「はい」 「なっ!! はぁ……今なら空飛べるわ……なんなら羽も生やせる気がする」  俺も先生の顔がタイプだからだ。    こんなアホなことを言ってるから中身は決してタイプではないけれど。  結局俺も見た目だけで決めちゃってるな。  ただ先生は他のひととは違って女っぽいとかそうやって馬鹿にしてくることがないから、苛つかない。  改めて、先生の顔をじっと見てみる。  ……うん、紛れもないイケメンだ。それはもう認めよう。  あー、今まで先生の顔が俺にとってタイプとか考えたこともないのに、なんか悔しいな……

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