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なにをされるんだろう、なにかをされたとして俺はこのひとに抗うことができるのかなと色々考えていると、エレベーターが到着したらしく、ポンという機械的な音が鳴る。
扉が開いて先生が先に乗り込み、俺はその後に続くように中に入った。
扉が開いて完全な密室になり、俺はそこで先生とふたりきりということを色濃く実感した。
今までふたりでいてもなんとも思わなかったけど、やっぱりここまで狭い空間でふたりきりとなるとさすがに意識する。
それは先生も同じなのか、俺の顔を見てクスリと笑った。
「なにもしねえよ、こんな狭い中で」
「……信じられないです……」
「だったらもっと傍においで。触らないから」
俺が角のところに立っていると、先生がちょいちょいと手招きをした。
もう片手には俺のエコバッグを持っているから、変なことをしようとしてもさすがに出来なさそうだ。
その先生の言葉通りに近すぎない程度に先生の隣に立つ。
ちら、と先生の顔を見上げるために目線を上に上げると、優しい顔をした先生と目が合った。
う。
そんな顔をされて、俺はどんな顔をすればいいんだよ。
微笑み返そうにも俺がそんなことをしてもただ気持ち悪くなるだけだし、たぶん先生はそんなことを求めてない。
……だったら。
「うおっ」
俺は無言で、先生の身体にぴったりと密着するように先生に身体を寄せる。
先生も俺の急な行動に驚いたのか、随分間の抜けた声を発していた。
ふふん、と俺はにやりと不敵な笑みを顔に貼り付けて先生の顔を見上げる。
「先生は触らないんでしょ?」
「……」
「でも、俺から先生に接触する分には構いませんよね。ねえ、先生」
やられっぱなしは癪に障る。
だから俺は、敢えてこの立場を利用することにした。先生という立場のこのひとが、生徒である俺に対して嘘をつくなんて許されることではないだろうし、それを先生も十分に理解していると思った。
いや、寧ろ理解しすぎているのかもしれない。
その証拠に、先生は手招きをしていた手を頭上に上げて決して俺に触れないようにしていたから。
もしここで俺に触れてしまったら、俺を傷つけてしまうとでも思っているのかな。
……怠慢教師のくせに、怠慢教師らしくそんな細かいことなんて気にしなければいいのに。
俺の言葉ひとつでここまでなってしまうなんて。
────試したくなった。
「……先生は」
俺がここで本音を言ったら、
「俺が、先生に触れてもらうことを求めたら」
先生はどんな顔を見せてくれるんだろうって。
「どこまで俺に干渉できますか」
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