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 扉をくぐるとまず、思っていたよりもずっと広い玄関が現れた。  下手すればそこら辺の一軒家よりも広い玄関かもしれない。靴を脱ぐスペースもやたらと大きい。  先生の靴と見られる靴がいくつか置いてあるけれど、そのどれも綺麗に手入れされていて汚れている痕跡が一切ない。  汚さないように心がけながら慎重にローファーを脱ぎ、向きを整える。  俺が上がったあとに先生も靴を脱ぎ、「こっち」と言って先に歩いて行ったのでそれについて行く。  床は白い大理石のようになっていて、それだけでも高級感があるのにドアは相反するように黒い。  先生がドアを開けるとそこはリビングで、広い窓や大きいテレビ、ふかふかしていそうなラグに座り心地のよさそうなソファなどが一気に目に入ってきた。  なんとなく散らかっていそうな部屋を想像していたのに、綺麗に整っていて驚いた。 「キッチンはこっちだよ」 「え、でっか」  先生が指を指した方に目を向けると、俺のマンションよりも二倍くらい大きいキッチンがそこにはあった。  アイランドキッチンのように機能性が高そうなキッチンと、黒で統一された電子家具。  使い勝手がよさそうだなあ、なんて思っていると先生が冷蔵庫を開けた。  先生の後ろに立ってその中をこっそり覗いてみると、調味料やら具材やら残り物やらが置いてあって、生活感を感じた。  勿論缶ビールとかも入っていて、そこは俺が想像していた通りだったので少し安心した。  煙草を吸うならお酒も好きだろうと思っていたから。 「んん、思ってたより量あるな」 「作り置きの、ですか?」 「そ。いる? 味には自信あるけど」  にやっと先生が口角を上げて微笑んだ。  そんなに言うなら相当美味しいんだろうな、と思って味を想像してしまう。  そういえば、昼ごはん以来なにも食べていないんだった。こうも調理済みの食材を見ると、ついお腹が鳴りそうになる。 「ていうか、晩飯まだだろ? 俺ん家で食ってけば」 「え、いいんですか」 「いいよ。どうせなら量多めに作って残った分おまえにやるよ。そうしたら明日の朝とか食べれるだろ」 「……先生のこと一ミリだけ見直しました……」 「おい、せめてセンチにしとけ」  ネクタイを外しながら先生がそう言う。  料理をする時はネクタイを外しているのか。まあ布がフライパンとかに入ったら大変だからな。  誰かの手料理を食べるのはめちゃくちゃ久しぶりだから、少し楽しみだ。先生が自分で自信あると言うくらいなら、たぶん相当料理は慣れているはず。  先生が料理を作っている間暇だし、どうせなら先生の料理しているところを見ていようかな。    先生に許可を取り、具材を準備する姿を見つめる。  まな板を取り出して包丁を手に取り、迷うことなく野菜や肉を切っていく姿は思っていた以上に様になっていて。  やばい、ちょっとかっこいいかも……

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