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「俺がひとりで暮らすようになったのは成人してからだし高校生の時はなにもしなくてもご飯が用意されていたから、高校生のおまえがちゃんと料理をしてるのはすげえ偉いと思うよ、俺は」 「……そんなことは……」  高校生で一人暮らしをしているなんていうのは、中々聞かない話だろう。俺の周りですら一人暮らしをしているひとはいない。  そもそも俺が我儘を言ってこの高校に入ったわけだし、大人しく地元の高校に行っていればいいものの俺が希望して今の生活になっているわけだから、現状に不満はないし文句もない。  ……ただ、たまに寂しくはなる。  温かい母さんのご飯とか、家には常に誰かがいる安心感とか、家族と過ごすまったりとした時間とか。  今の俺にはそんなものがないから懐かしくも感じるけど、どこか寂しい。  勿論ひとりでいる自由はある。なにをしたって見られることはないし、叱られたりもしない。  自由は、ある。充足はそこまでない。  だから先生が俺のことを偉いって言ってくれたり、俺のことを気にかけてここまでしてくれるのはすごく擽ったくて、不思議な気分になる。 「偉いとか言うのは先生だけですよ。周りのひとは一人暮らししてるって言うと大体羨ましいって言ってくるから」 「それは一人暮らしの大変さをわかってないからだろうな。家に帰って誰もいなくて、夜もひとりっていうのはしんどいだろ」 「……最初のうちは、そうでした。テレビをつけておかないとなんか怖くて不安だったし、寝る前も静かすぎて寝れない日とかがよくありました」  今はもう、慣れたけど。  それでも慣れないうちは環境の変化に身体が追いつかなくて体調を崩したりというのが結構あった。  本格的に体調を悪くしたら看病してくれるひとは誰もいないから、少しでも不調を感じたら休むようにしていたからここ一年熱を出したり風邪を引いたりとかは一切していない。  最初は一人暮らしのわくわくやらなんやらがあったけれど、蓋を開けてみれば寂しさばかりだった。 「でも、今は俺がいるからさ」 「……」 「なんかあったらいつでも俺に言えよ。大体夜は暇だし、おまえが俺の料理を食べてくれるなら俺は喜んで料理をする」 「……それじゃ俺、食料泥棒みたい」  照れくさい。あまりにも小っ恥ずかしい。  俺の心理が全てばれているようで、なんだか先生と目が合わせづらい。    ここは……先生の家は居心地が良すぎる。入り浸ってしまったら、自分の家に帰れなくなってしまう可能性だって十分あるから絶対に来すぎてはいけない。  けれど、恐らく俺は何回もこの家に来ることになると思う。  だってこんなの来たくならないはずがない。   「大丈夫だよ。俺は構わないし、おまえが満たされるならそれでいい」 「……」 「俺はおまえを満たしてやりたい」    ……箸が、止まってしまった。  先生の、俺を思いきり甘やかすような声ですっかりお腹がいっぱいになったから。

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