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4-1
「次ー」
長かった定期テストを終え、数学の授業。
今はテスト返しを行っていて次々生徒にテストの返却がされる。
その反応は様々で、喜んでいるひとがいれば絶望の顔をしているひともいる。
今回は平均点がかなり低く、絶望の顔をしているひとが多数だ。そんな顔を見ていると俺は不安になってしょうがない。
いくら先生から教わったとはいえ、難しい問題が多かった。先生はテストを作る時はドSだ。応用問題だって予想していたより多く出た。
……から、自信はあまりない。
「はい、次」
俺の出番になり、先生の元に行く。
俺は大体テストでいい点数を取ることが多いから、クラスのひとは大抵俺に注目していることが多い。
今回も例外ではなく、俺の番になった途端クラスのざわめきが半分以下に減った。
優馬と爽介は、どうやら俺の点数を予想しているようでひそひそと話し合っている。
「さあ、何点取れたと思ってる?」
先生がテストの束をひらひらと持ちながら俺にそう言ってきた。
……自信は、ない。
けど、先生からあれだけ教わったんだから、いい点が取れていると思いたい。
「……80点いけば、いい方かなって」
普段の俺は、数学は苦手だから85点取れていればまあいい方だ。
他の教科で90点以上を取るから、数学はそれくらいになっても仕方ないと思ってる。
俺の返事を聞いた先生は、なにやら意味深に微笑み、俺にテストを手渡してきた。
そして────。
「全クラスで最高得点だよ。頑張ったな」
「……!!」
点数を見てみると、97点。
数学で3点の配点の問題はなかったから、恐らく計算ミスだけ。
今までで一番の出来で、嬉しくなってつい顔をテストの用紙で覆ってしまった。
先生は元から最高得点は97点だって言ってたから、クラスのひとも俺が97点だとわかったようでそれなりにクラスはうるさくなった。
「え、97点!? 俺その点数の三分の一なんだけど!」
「すごい、椎名くんってやっぱりめちゃくちゃ頭いい……」
「律ー! おまえー!!」
自分の席に戻ると、真っ先に優馬が俺のところにやってきて頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
まるで自分のことかのように喜んでいる優馬に、俺もつい笑みが零れてしまった。
「おまえすっげえなあ。あんなに数学不安そうにしてたのに、よくそんな点数取れるよなあ。一周回って気持ち悪いわ」
「気持ち悪い言うな」
「すげ、計算ミスがなければ100点だったのか……」
爽介が俺の答案を見てそう言った。
一緒になって見てみると、最後の問題の一番難しい応用問題で間違っていた。見直しの時間が足りなくて、確かめができなかったところだ。もし見直しをしていれば100点を取れたのかもしれない。
先生に教わっておいて悪い点数を取るわけにはいかなかったから、本当によかった。
すると爽介が先生に呼ばれ、答案を取りに行った。
爽介は理数教科が本当に出来がいいから、爽介もかなりいい点を取っていると思われる。
先生となにやら笑顔で話しており、優馬もなにかを感じたのかその様子を見ながら、言った。
「あれ、爽介も絶対いい点数だろ」
「だろうな」
爽介が戻ってきて、答案用紙を俺の机の上に置いた。そこに書かれていた点数は────93点。
か、勝った……!
「くっそー律に負けた。先生にも言われちゃったんだよな、あいつ今回相当数学頑張ったから、抜かせなくて残念だなって」
爽介が少し悔しそうにそう言う。
先生に頑張りを認められているのは、少し恥ずかしいけどその分やっぱり嬉しい。
それと、テストでいい点を取ると普通に気持ちがいい。快感。最高。
俺はテストでいい点を取る快感に勝るものを知らない。
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