＊＊＊＊＊ 「うわ、あっちー……」 「夏休み前でこの暑さっておかしくねーか」 「しょうがねえだろ、バスケ部の恒例行事なんだから」 　なんだかんだ言ってあっという間に夏休み前最後の授業は終わり、現在時刻は三時半。 　夕方に差し掛かる前、日が沈む前太陽の主張が激しい中。俺たちバスケ部は屋外のプールサイドに足を運んでいた。 　日に当たっているせいかプールサイドは熱く、足をつけているだけでも火傷しそう。ビーチサンダルを持ってきてよかったとは思うけれど、耐えられるのも時間の問題のような気がしてきた。 　なんで今プールにいるかと言うと、バスケ部は夏休み中の練習が終わったらクールダウンも含めた意味でプールに入る。 　けれど、屋内のプールは水泳部が使っているため俺たちは屋外のプールを使うのだけれど、屋外のプールはバスケ部しか使わないため夏休み前に部員全員で掃除をする、というわけ。 　 　去年もやったけど、これがまあ過酷で。 　屋内スポーツをやっている身からしたら暑い日差しは正直耐え難い。 　掃除をした後にプールに入ることができるからそれはまあいい点かもしれないけれど…… 「……あの、顧問」 「どうした？」 「なんでそのひとがいるんですか……」 　俺がさっきからずっと気になっていたのは、明らかにバスケ部とは関係がない麻橋先生がいること。 　しかもちゃっかりワイシャツ姿から水に濡れてもいいような格好をしているし、やる気満々のように見えたけど、実際はそうでもないのかもしれない。 「どう〜しても麻橋先生がやりたいって言うからしょうがなく連れてきたんだよ。な、麻橋先生」 「あ、はい……」 　どう考えたって無理やりにしか見えませんけど。 　……部員の声が聞こえてきたような気がした。 　すると、現キャプテンの爽介が皆よりも1歩前に出る。当然注目はそこに集まる。 「先生わざわざありがとうございます。助かります」 　にっこりと人当たりの良い笑みで、先生に向かってそう言った。 　先生はその様子に少しばかり驚いた様子を見せたけど、らしくない笑みを浮かべていた。 　その、なんともないやりとり。恐らく俺以外の部員はなんとも思わなかっただろうけど、俺だけはなんとなく違和感を感じた。 　……今の、俺だけに見せてた顔だ。 　俺だけにと言うと語弊を生むかもしれない。正確には……学校以外で、見せる顔。 　最近、この顔を見ることが増えた気がする。