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「やーばっしーがいると助かるわ。モチベ的にも」
「麻橋先生のこと気に入ってるもんな、優馬は」
優馬が先生のことをやけにキラキラした目で見つめていた。実際なにを思って先生を見つめているのか俺にはさっぱりわからないけれど、そこには純粋な好意が含まれているように見える。
先生のところに部員が集まっているから、その隙に聞いてみることにした。
「なんでそんなにあの先生のこと気に入ってるの?」
「え、そりゃ愚問ってやつよ」
「いいから答えろ」
いつから愚問って言葉を使えるようになったんだこいつ。ちゃんと意味わかってんのか。
俺の問いかけにさして考える様子を見せず、頭の後ろで手を組んでから口を開いた。
「だってあのひと律のこと好きじゃん」
「……は?」
「あ、勿論ちゃんと生徒としてな? 律のこと好きな奴は俺も好きーって理論で、俺はばっしーを気に入ってます」
「待て待て、さっぱり理解できない。え、日本語?」
ふたつ気になることがある。
ひとつ、なんで優馬があのひとが俺のことを気に入っていることを知っているのか。
ふたつ、俺のことを好きな奴は優馬も好きって意味わかんねえ。
「俺のこと好きな奴のことを好きになるってどういうこと?」
「俺の大好きな律の魅力をちゃんとわかってるってことだろ? そりゃ気に入るに決まってるだろー」
俺の肩をぎゅっと抱きながらそう言った。
少なからずそう言われると友人でも照れるものがあるというか、なんだか小っ恥ずかしい。
優馬は去年からずっと俺にべったりしているから、どこか俺のことを気に入りすぎている節がある。
だからそういう思考にたどり着いたんだろうけど……
麻橋先生はやめとけ……
喰われるぞ……
「別にあのひと、そこまで俺のこと気に入ってないと思うけど」
「えっ」
「え?」
いや、本当のことを言うとかなり気に入っていると思う。あれだけ感情やらを出されたら嫌でも認めるしかないし、結構な発言までされているし。
けれど……なんとなく誤魔化したくなった。
でもこの優馬の顔を見る限り、たぶん俺が誤魔化しているのはバレていると思う。
「……」
「……なに」
やけにあほ面で俺を見つめてくる。
やめろ、イケメンが台無しだ。
かと思えば、急に俺にがばっと抱きついてきた。
「は……!? ちょ、なに、暑い!」
「俺いつか律のこと食べちゃおっかなー」
「馬鹿、なに言ってんだ!」
「可愛いなぁ全くぅ、このこの〜」
「……!?」
なにこいつ、なに考えてるんだ、え?
今まで優馬から過剰なスキンシップを受けたことがないから、抵抗できずに固まってしまった。
そもそもお互い薄着で露出度が高めだから肌どうし密着し合うのに、そんなこと一切考えてないとばかりにぐいぐいとくっついてくる。
俺も優馬も既に水着を着ているから太ももの中間からがっつり足は出ているし、俺は半袖のパーカーを着ているけど優馬はタンクトップだ。いつも以上に互いの肌が見えている状態で抱きついてくるなんてどうなっているんだろう。
あ、しかもやけに視線感じると思ったら麻橋先生めちゃくちゃこっち見てる。
うわ、不気味な笑顔……
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