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……って、俺、言いすぎ。
俺の口から出た言葉に、さーっと身体中から血の気が引いていくのがわかる。
いくらなんでも言いすぎた。相手は先生なのに。
恐る恐る先生の顔を確認してみると、怒っているかと思ったのになぜか嬉しそうな顔をして俺のことを見つめていた。
……なんで?
「おまえ……」
先生は、怒っているどころか嬉しくて堪らないって顔をしている。そんな顔をする理由が全くわからなくて、硬直してしまう。
「すみませ……」
「最初の方、俺について知りたいことなにもないって言ってたのに、今は知りたいって思ってくれてんの?」
「……え、」
ブラシの柄の先端に腕を乗せながら先生がそう言う。
言われてようやく思い出したのは、先生に自殺を止められた日の放課後、数学準備室でのやりとり。
『今ならなんでも答えてやるよ。特別にな』
『なんでも、ですか』
『なんでも。一物の大きさも教えてやらないこともない』
『知りたいことなにもないです。どうでもいい』
この、どうでもいいような、くだらない会話。
俺は先生に言われてやっと思い出したのに、先生は覚えてたってこと?
あれからもう一ヶ月ちょっと経ってるというのに。
嘘だろ、このひとどんだけ記憶能力高いんだよ。
「そのときはやっぱり俺に興味ないのかなーとか思ってたけど、今はそう言ってくれて嬉しいよ。って、こんなこと言ったらまた怒る?」
「……」
「ね、なんか言えば」
覚えていることに対しての驚きと、俺の感情の変化に対する驚きと、色んな感情がごちゃ混ぜになってなにも考えられなくなった。
先生に間違いなく懐柔されてしまっている。
……そうだ、思い出した。最初の頃はあんなに先生のことを警戒していたのに、今となっては全く警戒していない。それどころか先生が俺に侵入してくることを許容してしまっている。
このままでは俺は間違いなく、
(ほんとうに、喰われてしまう。)
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