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「ふー……」  プール掃除を終えてからプールに入り、終わった後すぐは涼しかったものの少し時間が経つとあっという間に暑く感じる。  今日はもう部活とかないし、このまま帰ろうかなあ……  駐輪場に向かうために校舎から出ると、自販機のあたりに見覚えのある後ろ姿が。  あれって。 「梨奈ちゃん」  別に見かけて話しかける必要はなかったはずなのに、どうしてか話しかけてしまった。俺の声に反応して、梨奈ちゃんは勢いよく振り返る。    俺の声だとすぐにわかったのか、驚いた顔をしながら俺のことを見ていた。 「へ、律さん……!?」 「ごめん、話しかけて」 「全然! わたし、もしかしたら会えるかもしれないって思ってここにいたので!」  にこにこと笑顔でそう話しているけれど、今はそんな早い時間ではない。  この子が部活動に入っているのかどうかは知らないが、結構待っていたんじゃないかな。  健気だなあ、なんて思っていると梨奈ちゃんがあたふたと周りを見渡し始めた。 「あの、優馬先輩と爽介先輩は?」 「練習してから帰るって」 「そうなんですね……」  なんであのふたりの名前を知っているんだろうと思ったけど、校内ではかなりの有名人なんだから知っているはずか。俺がそのふたりと一緒に行動しているというのも把握済みなんだろう。    梨奈ちゃんがなんだかよそよそしくなる。  きっと俺と話したくてもそれを言う勇気がないんだと思う。  まあ、時間もあるし。 「よかったら、少し話す?」  俺からそう言うと、梨奈ちゃんはぱあっと顔を輝かせてやたらキラキラした目で俺のことを見た。 「い、いいんですか?」 「うん。飲み物奢るよ」  俺もこの子とはもっと話してみたかったから丁度いい。  自販機で飲み物をふたり分買って、あまりに人目につかないベンチまで移動する。  既に外は暗いから遠くから見てもあまりわからないだろうけど、梨奈ちゃんがひとに見られないところがいいと言った。  近すぎない位置に座り、買ったオレンジジュースを飲む。火照った身体に冷たい液体が通り過ぎていって一時的に涼しくなる。  俺から話そうとは言ったけど、話題がすぐ出てこないんだよな。  どうするかな、なんて思っていると梨奈ちゃんが口を開いた。 「こんな風に律さんと話せることになるなんて思ってませんでした……嬉しいです」 「それはよかった」 「女子に冷たいって聞いてたからちょっと怖かったりしたんですけど、全然そんなことなくてよかったです」  う。もうそんな風に言われてるのか。  確かに事実ではあるしそう言われてもおかしくはない。ただ、傷つくものは傷つく。  別に優しくしようと思えばいくらでも優しくできるんだけどな。それで勘違いされるのがとても面倒。 「やっぱりそう言われてるか」 「はい。でも、顔がいいから全然そんなの気にならないって私の友達みんなそう言ってます」 「……」  複雑だな、おい。

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