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「ごめん、俺は梨奈ちゃんに対して下心はないよ。ただ、したいと思うかどうかで結構わかるかもしれないと思って」
「え、えええエッチ……」
「……」
顔を思い切り赤らめている姿を見て、そういうビデオの冒頭のインタビューを見ているような気分になってしまった。
まずい、こういう空気にするつもりはなかったんだけど。
高校生になったんだし、ある程度こういう話には耐性あるよな、大丈夫だよな……?
「それって、先輩の前で裸になるってことですよね」
「……まあ」
「そ、それで、色んなこと……」
「あー、わかった。キス、キスにしよう」
エッチという例を出した俺が悪かった。
キスをしたいかどうかに仮定を変え、改めて聞き直す。
するとやっと現実味を感じたのか、梨奈ちゃんは真面目に考え始めた。
考える時間は思いのほか短くて、すぐに答えは出たようだった。
「したいとは、思わないです」
「……」
「うん、思わないかも。そう聞かれると、恋愛感情ではないような気がします」
「そう」
それを聞いただけで少し安心した。どうして安心したのかは自分でもよくわからなかった。
「わたしが受験勉強を頑張れたのは、本当に先輩のおかげなんです。すごく大変だったし高校が楽しいのかわからなかったけど、それでもわたしはこの高校に入れてよかったです」
「そっか」
「ありがとうございます」
別に俺のおかげではなく、梨奈ちゃんが頑張った結果だ。俺はなにもしていないのに、偉い子だなと思う。
これでこの話は終わりにしようと思っていると、梨奈ちゃんがおもむろに口を開く。
「……あの」
「ん?」
「今聞かれて思ったことがあって、それについて相談したいことがあって……」
いいですか、と小声で聞かれた。
勿論それを却下する理由はないので、「いいよ」と言った。
梨奈ちゃんが一度ジュースを飲んで喉を潤してから話し始めた。
「わたし、もしかしたら女の子のことを好きになっちゃつたかもしれなくて……」
「……!」
「これって、おかしいこと、ですかね」
少し震えた声で、俺ですらギリギリ聞き取れるくらいの声量でそう言った。
その声に、どれほど考え抜いたのかわからないくらいの重みがあって、簡単に俺が意見を出せることではないことがすぐにわかった。
世間では、同性愛と言われるもの。
そして、俺の頭には────何故か、麻橋先生が浮かんだ。
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