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 俺、今まで先生のことをちゃんと考えたことがなかった。  よくよく思えば、俺と先生は男どうし。同じ性別。普通のひとから見るとどう考えたって恋愛をするにはおかしいと言われるだろう。  先生があまりにも普通な態度で俺に接して、俺に普通に意識させてくるから全く違和感を感じなかった。  ……確かにこの状況って、おかしい、よな。 「その子は高校に入って初めてできたお友達なんですけど……すごく、可愛くて。わたしなんかよりもずっと」  やや俯きがちに梨奈ちゃんが話し始めた。  その子のことを思いながら話しているのか、その顔はほんの少し赤くなって和らいでいる。  恋をしている女の子を間近で見ると、どうも不思議な気分になってしまう。 「その子と一緒にいるだけで楽しいし、すごく満たされる気分になるし……」 「……」 「けど、女の子どうしのノリとかで、ぎゅーし合ったりとかすることとかあって」  そう言われて納得する。  俺のクラスでも、仲良い女子どうしがやたらとくっつきながら話していたり、ときには過剰なスキンシップを取っていることも多々ある。  やっぱりどの歳の女子でもそうなのか。 「その、それでその子とぎゅーしたとき……すごく、ドキドキして」 「……!」 「今まで感じたことないような、少女漫画を読んできゅんきゅんしちゃうような、そんな感じで」  制服のリボンをぎゅっと掴みながら話を続けている。  俺はただ、その話を相槌をして聞くことしかできないけれど。 「そのときはなんでだろうって思ったんですけど、それからその子のことを意識することが増えて」  どうしてか、梨奈ちゃんと今の俺が重なって見える。  なんだか……俺が先生のことを少しずつ意識してしまっているのと同じような……? 「それでさっき、律先輩が言ったじゃないですか。え、エッチとかキスとか」 「う……うん」 「わたし、その子としたいかもって思っちゃって」  ぼっと顔を急に赤くして、口元を覆っていた。  外は顔色をやっと把握できるくらいの暗さなのに、こんなにもはっきりと顔を赤くしているのがわかるなんて、どんなに勇気を出して俺に話してくれているのだろう。  その素直な気持ちに、どうしてか純粋に応援したいと思ってしまった。 「……変、ですよね」  顔を赤くして口元を覆っていたかと思えば、やや自嘲気味に笑って俯いた。    きっとこの子は、今まで異性の恋愛しか見てこなかったのかもしれない。  テレビドラマや映画で描かれている恋愛は大体が異性愛で、同性愛がテーマの作品は稀だ。俺だってそういう類のものは避けてきた。  けれどなにも、身近にはあまりなかったとしても恋情は異性に限られたものではない。  と、俺は思う。だから…… 「変じゃない」 「……!」  俯いていた梨奈ちゃんがぱっと顔を上げる。  俺は同性からそういう目を向けられたことがあるから若干否定的ではあった。けれどそれは全て俺への邪な気持ちが含まれていたものだから邪険にしていただけであって、梨奈ちゃんの好意は、すごく綺麗なものだと思う。 「そういう梨奈ちゃんは、俺は可愛らしいと思う」 「へ、……っ、え……!?」

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