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だって今でもそれなりに怖いし、あまり怖がっているように見えないように頑張ってる。
いつもみたく余裕はない。
……ていうのも、どうせ先生にはばれてるんだろうけど。
「先にお風呂入る? 予約しといたから、お湯は入ってる」
「……ああ、えっと……入りたいんですけど……」
「……なあ」
俺がすぐに答えずに目線を逸らしてそう言うと、先生がキッチンから少し不安げというか、そんな感じの声を出した。
「ひとりじゃ入れないとか、そんなことは言わないよな」
「……」
「おい」
「入れません……」
「まじか」
まじです。こんな中ひとりで入れるわけない。
ひとりで狭い空間の中に閉じ込められるようなものだし、髪を洗っているときとかは目を閉じている。
そんな無防備な状況の中でもし雷が落ちてきたら、と想像すると。
もう怖くて怖くて堪らない。
「でも、お昼にシャワーを浴びてるので一応身体は綺麗です……よ?」
「それは学校のでしょ。それに今濡れたままにしとくのはよくないと思うけど」
「身体は強いです」
「……成程、意地でも入らないつもりなんだ」
はい、その通りです……
ソファの上で正座で先生の方を向いていると、ずっと思案していた先生が口を開く。
「俺と一緒に入るのはどう?」
「……えっ」
「それなら安心じゃないの」
俺と先生は同性だし、見るのも見られるのも抵抗はないっちゃない。いや、見られるのは少し抵抗があるかもしれない。筋肉あまりついてないし。
けど。
先生って一応俺のこと狙ってるん……だよな。
それで俺と一緒にお風呂に入って、俺に手を出さないとかそんなのありえるのかな。
「……ま、安心はしていいよ。怖がってる奴に手出すとか、そんなの男じゃないしな」
「……男」
「それに、風呂のすぐ横にサウナ室あるから俺が髪とか洗い終えるまでおまえが洗面所にいて、そのあとに俺がサウナ室行っておまえが風呂入って……って感じでやれば俺がおまえの裸を見ることはないし、ひとりだから怖いって思うこともないと思うんだけど」
どう? と先生が言った。
……確かにそれならいいかもしれない。
お風呂場にサウナ室まで完備されてるのはちょっとよくわからないけれど。
「それなら大丈夫です」
「じゃあ決まりな。あとちょっとで温め終わるから、テーブル座って」
言われた通りテーブルに座り、先生お手製の焼きおにぎりを頂きになった。
味付けやこんがりとした綺麗な焼き色、形や大きさなど全てが完璧な焼きおにぎりはとっても美味しかった。
先生なら嫁にしてもいいなと上から目線で思ってしまった程。
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