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「着替えは俺のでいい? ちょっと大きいかもしれないけど」 「……そのズボン、絶対ぶかぶかになる自信があるんですけど」 「これ俺が持ってるやつで1番細身のやつ」 「わかりました、なんとか工夫して履きます」 「怖」  焼きおにぎりを食べ終えて洗面所にやってきた。  洗面所も当然広くて、男ふたりがいても全く窮屈に感じられない。  白と黒で統一されていて、清潔感をめちゃくちゃ感じる。俺のマンションの洗面所の二倍以上でかいから、余計にそう思う。  着替えをいくつか持ってきてくれたけど、明らかに体格差があるからかどれもサイズが大きい。  その中でも先生が着て少し小さいと感じるものを着させてもらうことにした。それでも俺からしたら大きい。どうなってるんだ。  俺が服をまじまじと見ていると、先生がワイシャツのボタンを外して脱ぎ始めた。 「わっ!」 「女の子みたいな反応すんなよ」 「先生が急に脱ぐから」 「風呂入るんだから当然。なるべく早めに済ませるから、少しだけ待ってて」 「はい……」  ワイシャツを脱ぎ終えて、ズボンも脱ぎ始めた。  さすがに下半身を見る勇気は俺にはなくて、さりげなく目を逸らす。  それでも好奇心には勝てなくてちらっと一瞬だけ見ると、綺麗に筋肉がついた生脚が目に入った。  なんだか見てはいけないものを見てしまった気分になって、顔ごと思いっきり逸らした。  その反応を見て、先生が少しだけ笑う。 「じゃ、入るから。脱いだ服は洗濯機の中入れていいよ」 「ありがとうございます……」  風呂場のドアを開け、先生がしっかり入ったのを確認してから逸らしていた顔を元の位置に戻した。  いくら広めの洗面所だからといって急に先生がいなくなると少しだけ怖くなって、ひゅっと喉が鳴りそうになった。  けれど、すぐに先生の気配を感じたから恐怖は軽減された。  わざわざ俺の我儘に付き合ってくれるなんて、心が広いひとなんだなあと思う。  ……いや。俺のことを狙っているって堂々と俺の前で宣言するかのように言ったんだから、ここまでしてくれるのは当然と言ってもいいのかもしれない。  それにしては、あまりにも優しすぎる気もするけれど。  箱入り娘を初めて外に出すときのような過保護なものを感じる。  俺は箱入り娘でも残りの命が短い少女でも、なんともないというのに。  ……わからないな、相変わらず。  壁に背中をつけて、そのままずりずりと下がっていく。ぺたんとお尻をつけると、先生が髪を洗っているのかシャワーの音が聞こえてきた。 「……先生」  絶対に先生に聞こえないような声量で、小さく音の方向に向かって呟いてみた。  その瞬間、背徳感のようなものがつま先から一気に上がってきたような気がして、ずくんと身体が震えた。  まるでいけないことをしているかのような感覚に襲われて、かっと瞳孔を開いたまま固まってしまった。  ……物凄い背徳感だ。  裸の先生とは壁一枚しか隔たりのない空間にこれから俺も裸で足を踏み入れるなんて、なんてはしたないんだろう。

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