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 え、嘘だろ? とそのまま硬直してしまった。  男のそれってそんなでかさのものが存在するの、と。  パンツから視線をずらして先生の顔を見る。  顔だけ見れば、悪く言う場所なんて見当たらない完璧な顔。たぶんだけど学生時代は影でこっそり女子から王子様みたいと言われていたと思う。  てか、今も影でそう言っている女子はいるし、先生を推している子は多い。  ……だから、だからこそ俺は先生のそれのでかさがどうしても信じられなかった。  けど、たった今自分の目で見ちゃったんだよなあ、先生のでかいそれを。  ……なあ神様。そこくらいは普通のひとよりも劣っているように作ってもおかしくなかったんじゃない? 「なに固まってんの」 「……すみません」 「いいけど。髪濡らしたままだと風邪引くよ」  上下ちゃんとスウェットまで着た先生が、俺の濡れたままの髪の毛をぐしゃっと掴んできた。  対する先生も濡れているくせに、とは言わない。 「普段はドライヤーしてます。大丈夫です」 「……じゃあしてやるから、ここ立って」 「えっ?」  その言葉の意味を聞き直すより前に、三面鏡の前に立たされてしまった。  すると先生が後ろに立って、なんだか高そうなドライヤーのコンセントをプラグに差してから電源を入れた。  そのまま先生が自ら髪の毛を乾かすかと思いきや、なんと俺の髪の毛を乾かしてきた。  温風が後頭部に当たり、先生がくしゃくしゃと俺の髪の毛を触ってきた。  ……してやるって、こういうことか……  ドライヤーは正直面倒だし、してくれると言うのなら大人しくしてようかな、なんて思って目の前の鏡を見つめる。  先生が俺の髪の毛を乾かしている様子を鏡越しに見つめて、普段は意識しない身長差だとかがはっきりわかった。  やっぱり先生は背が高い。182センチあるって前言っていたような……気がするけど、どうやら本当のようだ。  いいなあ、こういうの。  女の子が羨むシチュエーションだろう。  すると少し乱暴だった先生の手つきが優しいものに変わって、ドライヤーの風も少し収まった。    撫でられるような髪の触り方に、つい気持ちよくなって目を細める。あやされているような気分にならなくもないけど、なんだか心地がいい。  ぽーっと目を細める自分を鏡越しに見ていると、先生がふっと笑った。ドライヤーの風が弱めだから先生の声もちゃんと聞こえる。 「猫みたい」 「……なに猫……?」 「黒猫」 「髪が黒だからですか」 「正解」  安直だなあ、なんて思ってふふっと笑みが零れてしまった。 「俺が黒猫なら先生は野獣ですね」 「ちょっと嫌だな、それは。今度の文化祭で猫耳とかつけないの?」 「中学のときやったので嫌です……」 「……あ、そうだったな」  ……え、先生なんて?  どうして今、まるで思い出したかのように言ったんだろう。  ……まあ、俺の聞き間違いか。

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