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6-3
ぐいぐいと両手を引っ張られ、途中転びそうになりながらもなんとか車に到着した。
新幹線に乗っていた疲労と、今のたった数分間でどっと疲れが押し寄せ、荷物と一緒に車の中に乗り込んだ時、一気に眠気に襲われた。
やばいな、こんだけ子どもがいたら寝れるはずないのに超眠い。
一番奥の座席に爽介と一緒に座っているのだけれど、前の席には子どもが三人とも乗っている。
これじゃあ絶対寝れるわけないよな……
くあ、と欠伸を噛み殺していると爽介が俺の様子に気づいたらしく、「どうした?」と声をかけてくれた。
「あ、うん、ちょっと眠くて……」
「だよな。寝る?」
「いや、でも」
「律くぅん!!」
たぶん無理だと思う、と言おうとしたところで子ども3人が一斉に振り向いてきた。
シートベルトをせずに膝立ちをしているのか、肩まで見える。
どうせ質問だのしたくてうずうずしてるんだろう。その気持ちもわかるけれど、今は眠気の方が勝っている。
「おまえらシートベルトつけろ。律が寝たいって言ってるから、静かに話そうな。その間は俺が話し相手になってやるから」
「ほんと!?」
「しー!」
子どもというのは従順で、普通の話し声くらいならなんとも思わないのにひそひそ話をするかのような声に変わった。
素直なところは純粋に可愛らしいな、とは思う。
こういう風に俺も手軽に子どもとコミュニケーションを取れればいいのだろうけど、生憎俺はそこまで器用じゃない。
現実逃れをするかのようにぎゅっと目を閉じ、なにも気にしないように心がけていると気づいたら眠りに落ちていた。
「律、ついた。起きて」
「……ん……」
「相変わらず寝起き悪いな。ほら」
うとうとしながら目を覚ますとどうやら爽介の腕にくっついて寝ていたらしく、爽介に頭を叩かれてようやく目が開いた。
子どもたちも騒ぎ疲れたのかすぅすぅ寝ていて、その様子を座席の背もたれの上から覗き込む。
あどけない寝顔が、いち、にい、さん。
静かにしてれば素直に可愛いって思えるんだけどなあ、どうしても苦手意識はそう簡単にはなくならない。
おばさんが子どもたちを起こし、子どもたちが車を降りたあとに俺と爽介も車を降りる。
荷物を取り出し、久しぶりの我が家と新鮮な空気に俺はぱちぱちと瞬きをし、ゆっくりと深呼吸をした。
どちらかというと田舎で、周りは田んぼで囲まれている。
俺の実家は和風の屋敷のような家で、寝る時には着物を着るような家だ。
スウェットの着心地のよさを知ってしまった今では、着物を着るのを少し躊躇う。
爽介は俺の家に来る度に「相変わらずでかいなー」なんて言う。
普段は家族や祖母くらいしかいないから静かだけれど、こうやって親戚が集まるとすぐに騒がしくなる。
その騒がしさが、俺は割と嫌いだった。
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