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「律!」   「母さん」 「おかえり。わざわざお迎えありがとうございます」 「いえいえ〜」  車から降りると、母さんが俺と爽介を迎えに来てくれた。  エプロンを着ているということは、食事の準備をしていたのだろう。わざわざ母さんがすることないだろうに。  俺の母さんは、俺が言うのもあれだけどかなりの美人だ。年齢を感じないハリのある白い肌に、白髪ひとつ見えない黒く長い髪。  俺はこの母さんの遺伝子を強く引き継いだから、子どもの頃から似ているねと言われることが本当に多かった。  勿論今でも言われるけれど。 「ただいま。元気だった?」 「この通り元気よ。爽介くんもいらっしゃい。爽介くんがいるから向こうでの律のことも心配ないわ」 「そんなことないですよ」  元々俺が県外の高校に行くことを母さんは心配そうにしていたけど、爽介も行くと知ってからは一人暮らし用の部屋の手配やらなにやらまで全て手伝ってくれた。  それほど、俺の家族の爽介に対する信頼は厚い。 「父さんは?」 「中にいるわよ。早く入りなさい、お腹空いてるでしょ?」 「うん」  対する父さんは、若い頃からずっとかっこいいと騒がれ続けるほど男前な顔立ち。  高校生の時に母さんと父さんは付き合ったらしく、当時は美男美女同士でお似合いだとよく言われていたらしい。  そんなふたりの子どもは、まあ俺な訳だけど。  両親は俺にたくさんの愛情を注いでくれたし、いつだって俺の味方だった。    ────いや、俺たちの、か。  玄関から家の中に入り、声がする方の部屋に歩いていく。 「……律」 「なに……」 「顔真っ青だぞ」 「それくらい嫌なんだよ俺は」  まあ、大好きだ。母さんと父さんは。  それ以外の親戚や従兄弟やらは、別にそうでもない。  ……その理由は、とりあえずこの部屋に入ったらわかるだろう。  襖を開けると、騒がしかった部屋が一瞬だけ静かになって全部の視線が俺たちの方に向いた。    そして瞬く間に、その騒ぎはさらに大きくなる。 「おお〜やっと来たか!」 「遅かったわねえ」 「みんな律くんと爽介くんを待ってたのよ! ささ、座って座って!!」  背中を押され、空いている空間にあるふたつの座布団の場所へ誘導される。  既に食事が始まっていたらしく、食材が減ったりしている中、周りの大人たちはわあわあと盛り上がっていた。  ……そんな中、ひとりの男子と目が合う。  俺のひとつ下で、至って平凡な顔立ちの。  目が合ってひどく驚いた表情になるもすぐに逸らされ、何事もなかったかのように隣の女子と会話をしていた。  ああもう、憂鬱なことだらけだ。

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