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 どくんと、大きく心臓が音を立てて跳ねた。  まずい。自分の中でされてはいけない質問をされた。  緻密に練り上げたものが、大袈裟に警鐘を鳴らして崩壊していくかのようなものを感じる。 「……え、そう?」  なんとか平静を保ってそう言ったつもりだけど、果たして爽介にこんなその場凌ぎの演技が通用するのか。 「俺の気のせいか? でも、明らかに話さなくなったのがちょっと不思議だったからさ。それだけだよ」 「俺、爽介みたく誰とも話せるわけじゃないから、どうしても緊張しちゃって」 「へえ、そういうことか」    とりあえず納得したのか、次は唐揚げを口に含んだ爽介。  危ない。  急に予期していない質問をされるとやっぱり気が動転してしまう。  なぜその質問をされるとまずいかと言うと────爽介が疑問を感じたは、俺の中で意図的に行ったものだったから。その、意図的に行った理由も簡単に話せるものではないから。  ……バレては、なさそうだけど。まあ、バレることもないけど。  子どもたちが去ったことで、この場には俺くらいの年齢か両親くらいの年齢のひとたちしかいなくなったわけで。  俺が最も危惧していたことになりうるだろう。 「ね、律くん、爽介くん」 「なんですか?」  爽介が、表向きの爽やかな笑顔で応じた。  俺は一応声をかけられたので見向きはするけどなにも言わない。  だって、既になにを言われるのかわかっているから。わかっていることをわざわざ聞くなんてこと、少なくとも俺はしたくない。 「高校を卒業したら、こっちに戻ってくるの?」 「正直、今のところは決まってないですけど。それがなにか?」 「もしこっちに戻ってくるなら、家族の家以外にも安心できる場所が欲しいでしょ? だから私の娘とお見合いしないかって、誘いに来たの」  ────やっぱりだ。  爽介の顔をちらっと見ると、微笑んではいるものの多少の表情の変化がわかる。  もう、そういう話をされる前にこういうのは布石を打っておくのが一番だ。 「……すみません、おばさん。俺も爽介も今は付き合ってるひとがいて、そういうのはちょっと」 「あらそう? なら、会ってみるだけでもどう? このあと時間あるでしょう、ね?」 「……」  効かない。  そうか、このひとにとっては俺たちの今なんてどうでもいいんだろう。  数年後のことを考えて、俺たちになんとかして紹介させようとしてくるのだ。  両親に助けてもらいたい、と思いちらっと両親を探すけど、いない。    ────ああ、そうか。  このひとたちは両親がいないときを狙って誘ってくるからそれは当たり前か。

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