112 / 148

6-11

 じゃあなんでわざわざここにいるのかというと、まあ、色々あって。  その智洋の隣にいるのが蓮。親戚の中ではとても仲がいい同性で、俺を見るなりにこにこと笑いかけてきた。もちろん爽介とも仲がいい。 「もーやっと来た。挨拶したかったのにふたりともすぐいなくなっちゃうからさー」 「ごめんって」 「ま、いいけどね。はい、かんぱーい」  蓮は思ったことをすぐ口にしてしまう性格だけど、ひとが傷つくようなことは絶対にしないから嫌いではない。  俺と爽介が席につくなり、グラスに入った麦茶を持ち上げて大袈裟に乾杯の合図をした。  それに倣いグラスを上げ、麦茶を口に含む。  水分を暫く取っていなかったから、麦茶の味が美味しく感じる。  俺がグラスから口を離したのと同じくらいのタイミングで、ずっと話したそうにしていた蓮が口を開いた。 「てか、律も爽介も大人になったよな」 「それわかる! 私たちなんてなんにも変わんないのに、見ないうちに大人っぽくなっちゃってー」 「まあ確かに、律は結構変わったかも。相変わらずモテモテだよ」 「それは爽介」  爽介がそんなことを言うから、美彩も蓮も興味津々と言った様子でやたらと目を輝かせながら俺のことを見つめてきた。  ……相変わらず、不気味なくらい静かな奴はいるけれど。 「えーっ、やっぱり!? 中学のときからもモテモテだったもんね……」 「俺、違う中学校だったけど律と爽介がモテまくってたってしょっちゅう聞いてたよ。な? 智洋」 「……ああ……」  にこり、と目の奥が笑っていないような笑顔で俺だけを見つめてきた。  思わずその顔にびくっと肩をはね上げてしまうと、隣にいた爽介がまるで牽制するかのように「律」と俺に声をかけてきた。  その声の通りに横を向いて爽介の顔を見ると、爽介が苦手なかぼちゃが口に運ばれてきた。  今どき間接キスやら友人が使った食器を使うことやら気にはしないしお弁当を食べるときにもよくあることだから特に気にせず、素直にかぼちゃを咀嚼していると蓮がぽかんと口を開けていた。 「うええ、おまえらすごいな。俺間接キスとか苦手」 「あんたは潔癖なくせにヤリチンでしょ! 黙れ!」 「ふごっ!」  美彩の拳が見事に蓮に炸裂した。  あーまたやってるよ、なんて思いながらそれを見つめる。  相変わらず和気あいあいとしているようで、なんだか安心した。  時間が過ぎて土地が変わっても、そこにいる人々に変わりはない。  ────変わりが、ない。

ともだちにシェアしよう!