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「おい蓮、女の子泣かせすぎると罰当たるぞ」  爽介が苦笑しながら言う。  すると蓮は否定することなく口を尖らせ、小さい子どものように頬を膨らませた。 「大丈夫だよ。気持ちよくて泣いてるみたいだし……」 「うわー! 節操無さすぎて引く。寝てる間にすね毛引っこ抜いてやる」 「美彩はガチでやるだろ! やめろ! つか、女の子のほうから寄ってくるんだから拒むのもあれじゃね?」 「……」  蓮は昔からそういうところがあるというか、悪い奴ではないんだけど節操はない。  特定のひとりと付き合っているところは見たことがないし、昔から女子とはそういう距離感だ。  と、いうか。  蓮は美彩に告白する勇気がなくて数年ぷらぷらしてるんだから、そのうち愛想尽かされそうだな……  美彩のことが好きなら他の女子と関係を持つのをやめればいいのに。  それを爽介も当然知っているから、やや引き気味に口の端をぴくぴくと無理やり上げながらそれを見守り、口を開いた。 「蓮、道を歩くときは背中に注意しなよ……」 「えっこっっわ! 脅してる?」 「死因が女の子の私怨なんて、嫌だろ」 「……おふ……」    あまりにも真剣なトーンで爽介がそう言うものだから、蓮が本気にしてしまったようだ。  それを美彩は完全に呆れた様子で見ていて、つーんと顔をそっぽに向けてしまった。  美彩も蓮に好意を抱いていて、蓮も美彩に好意を抱いているんだからどちらかが行動すれば絶対に付き合えるのに、不思議だ。  勝手ながら青春だなあ、と思う。  見てる側は焦れったいけど、第三者は見ているだけしかできないから本人たちが結ばれるのを待つしかない。  もし結ばれたときには、盛大に祝わないとな。  そのときのことを考えて、ふふ、と笑みが零れてしまった。  やっぱり地元はこういうところが居心地がいい。 「てか、俺たちの話はいいだろ。律も爽介も彼女はいないの?」 「いないよ」 「いない」  ふたりしてそう答えると、いるものだと思っていたのか蓮と美彩は同じタイミングで「ええっ!」と言い、顔を見合わせていた。 「嘘、なんで?」 「なんで……? なんでだろうな」    なんで、と言われても。  いないのが事実であって、それ以上に言いようがない。   「……東京って、可愛い子いっぱいいるんじゃないの?」 「まあ多いのかもしれないけど。今は部活が楽しいし、彼女はいいかなって」 「それでも健全な男子高校生かよぉ! 性欲を撒き散らかしてなんぼだろ!」 「あんたは黙ってなさいこの性獣!!」  美彩が蓮の頭をがしっと掴んだ。  蓮はそれを一切気に留めず、言葉を続ける。 「ふたりの顔なら何股でもできるだろ!? もっと高校生楽しめよ! なんなら俺を東京に連れてってくれ! ビバ! 女の子っっ!」 「うるせー!!」 「お、落ち着いて」

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