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6-24
「……夏だなー……」
「律、親父みたいなこと言うなよー」
その日の夜。
同中の奴らが俺と爽介が帰ってきたことを知り、折角だしみんなで花火をしようということでそれぞれお金を持ち寄って一番豪華な花火セットをふたつ買い、土手の近くで花火を散らしていた。
周りに街灯がほとんどなく、月の光だけが降り注いで、夜空には星が散らばっている。
じんわりと暑いので、俺も爽介もラフな格好にサンダルという最大限の楽な格好をしている。どうやらそれは他の奴らも同じのようだ。
どこかでセミが鳴いていて、暗い夜に鮮やかな花火が映える。じっとしているだけで汗が出てきそうなくらい暑いけど、懐かしい友人たちと一緒にいればそんなものは気になりはしない。
男子だけで集まって古臭い話をするのも、悪くはないものだ。
「なんでこの場に女子がいないんだよ……むさ苦しい男子だけなんて……」
「馬鹿野郎、律がいるだろ。俺にとっては律が女子以上の存在だよ」
「きもい」
「なにぃっ!?」
女子以上の存在とか、じゃあそれはなんだって話だ。
花火をぶんぶんと振り回しながら適当に話をしていると、珍しくげらげらと爽介が笑っていた。
普段は大人っぽく振舞っているものの、やっぱり地元に帰ると気が緩むのか、いつもより幼く見える。
俺もそれにつられて微笑みながら会話をする。
「東京では中々できないから、いいな。こういうの」
「えーっ。東京ってどんなとこ? やっぱり都会?」
「都会。高い建物いっぱいある」
「すっげー」
ここはどちらかというと田舎だから、高い建物というよりは山や丘がある。
見晴らしがよく、空気も澄んでいる。
東京にいるとどこが息詰まりを感じる気もするけれど……ここは、居心地がよすぎる。
できることならずっとこうやってくだらない時間を過ごしていたいけど、まあそういうわけにもいかない。
「やっぱ芸能人とかに会うの?」
「んー、何回か見たことはあるな。ていうか街歩いてると全員芸能人に見えてくる」
「すっげー!」
「おまえさっきからすっげーしか言ってねえな」
そんな誰かのつっこみが入り、全員が笑う。当然、俺も。
誰も、なにも変わっていないようで安心した。
変わったのは……俺だけかな。
「おまえら、俺と律がいなくて寂しくて泣いてたんじゃねーの?」
「ばっか泣いてねーし!」
「別に毎晩枕濡れただけだし」
「ははっ」
それはもう泣いてたって言っているようなもんだ。
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