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「チョコバナナってめっちゃエロくね? 律、いる?」
「えー、いる」
「優馬絶対変なこと想像しただろ。俺も食べる」
夏休みというものはあっという間に過ぎ去ってしまうもので、気づけばもう終盤。
俺は、優馬と爽介の三人で花火大会に来ていた。
折角だし……ということで浴衣をレンタルし、髪もいつもとは違うようにセットまでして。
すっかり夏休み気分のまま、俺たちは花火大会を楽しんでいた。
優馬が何故か俺にチョコバナナを買ってくれて、狙いはわかりつつもがぶっと先端を食べる。
するとなにを期待していたのか優馬はあぁっと言いながら残念そうな顔をして項垂れた。
おまえは本当になにに期待をしたんだ。
「そんなに見たいんだったら自給自足すればいいだろ。奢ってやるよ」
「馬鹿っ、俺はそんなはしたないことはできない!」
「自分にできないことを律に強制するな。引っこ抜くぞ、どこをとは言わないけど」
「……許しひぇ……」
「わかればいいよ」
ああ、成程。要するにチョコバナナを食べる様子を見たかっただけか。
なんだろう。優馬のその小学生みたいな思考回路は。
チョコバナナを食べながら適当に歩き、少しよさそうな屋台があったら買って食べる、という自由な感じで歩き回っていた。
下駄を履いているから少し歩きにくさも感じるけど、それがまたいい。
優馬は臙脂色の無地の浴衣で、爽介は紺色の少し模様が入った浴衣。俺は深緑の浴衣を着ており、浴衣を着ている男性は中々見当たらないからそこそこ注目を浴びる。
まあ、こんなのもたまには悪くない。
「あ、律! フランクフルトあるよ! いる?」
「さっき唐揚げ食べたばっかだけど……」
「ほら、あのふっといの……食べたくない?」
「よーし、優馬、俺が買ってきてやるよ。ぶっといの」
優馬が俺にフランクフルトを食べさせようとしていると、爽介がにっこりと作り笑いを浮かべたままフランクフルトの屋台まで行き、優馬のためにと買いに行ってしまった。
優馬が「うわぁぁぁ」と小さく悲鳴を上げている。
そんなに自給自足したくないのか、なんて思っていると爽介が戻ってきた。
手にしていたのはフランクフルト……ではなく、袋に入ったシャカシャカポテトだった。
優馬がえっ? という顔をしたまま爽介を見つめ、爽介はどこかドヤ顔でポテトを振っていた。
「馬鹿。大事な友だちに変なこと強制させねえよ」
「爽介……! 結婚しよう……!」
「ふ、五年経っていい男になってから出直してきな」
シャカシャカと効果音を立てながらドヤ顔する爽介……
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