132 / 148

6-31

 ちなみに今の可愛いは珍しく優馬ではなく爽介だった。爽介が俺にそう言うなんて珍しい。  優馬も爽介もたこ焼きを口に入れ、熱そうに咀嚼をしている。  熱そうにしているのにブサイクに見えないなんて、ちょっとおかしい。こんなときもイケメンとかありえない。  しょっぱいもの続きだと今度は甘いものが食べたくなるなー……と思いながら2個目のたこ焼きを頬張っていると、何気なく見た人混みに見知った顔を見つけてしまった。 「へんへ……!?」  たこ焼きが口いっぱいに入っているから喋ることはできなかったけど、俺の言葉にすぐに気づいた優馬が人混みの方を見て、人物を発見した。 「え、ばっしーと近藤先生じゃん!」 「おまえらもいたのかよ……」  俺たちと同じように浴衣を着て花火大会に来ていた麻橋先生と近藤先生がこっちにやってきた。  俺たちがいる場所は人が通らない端の方だから、集まってもなにも問題はない。  だけど、さすがにここまでイケメンが集まると視線を浴びてしまうという謎の問題が発生する。  俺は未だにたこ焼きが口の中に入ってるから喋れない。 「やっほ。みんな浴衣似合ってるねえ」 「先生もめっちゃかっこいいじゃないですか」 「事実を言ったところでつまんねえよ、優馬」 「ふぅー!」  なにがふぅー! なんだ全く……  ようやくたこ焼きを咀嚼し終えて、改めて麻橋先生 と近藤先生を見る。  麻橋先生はダークブラウンの浴衣を着ていて、額にかかる前髪をかきあげるような髪のセットをしているけれどいつものように目は多少隠れてはいる。まあ簡単に言うとめっちゃかっこいい。  近藤先生も近藤先生でグレーの浴衣が似合っているし、長めの髪の毛を結んでいるからいつもよりも大分若く見える。当然かっこいい。  イケメンの浴衣って、どうしてこんなに様になるのか教えてほしい…… 「あ、おまえら大判焼きいる?」 「え、先生たちが買ったんじゃないんですか?」 「2個しか買ってないんだけど、屋台のひとがすげえサービスしてくれたんだよ。ほら」  袋の中を見てみると、たしかにふたり分とは思えない量の大判焼きが入っている。たぶんだけど先生たちがイケメンだからだと思う。  食べ盛りの高校生からしたらお祭りなんて胃袋は無限のようなものだから、大判焼きのひとつやふたつ余裕で食べれてしまう。  それは爽介と優馬も同じのようで、遠慮なく袋の中の大判焼きを手に取っていた。 「いただきまーすっ」 「食え食え」  大判焼きを齧ると、中からはとろりとしたカスタードが出てきた。ふわふわした生地とカスタードはかなり相性がよくて、まだ温かいからとても美味しい。 「あ、ついてる」 「んっ」  俺の口にカスタードがついてしまったらしく、麻橋先生が指で取ってくれた。するとそのままその指を舐めて、自分の分の大判焼きをなにもなかったかのように齧り付いた。  別に俺は先生が俺の口についたものを取ったことも、その指を舐めたこともなんとも思わなかったけど……俺以外は、そうではないらしく。 「……ここだけR18の世界が広がってる……」 「ふっはは!!」  優馬の馬鹿みたいな言葉に、近藤先生が大声で笑った。笑わないでせめてつっこみを入れてくれ。

ともだちにシェアしよう!