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 花火が打ち上がるまでの間は、他愛もない話をした。  夏休みの課題は終わったか、とか、夏休みなにをして過ごしたか、とか。  ゆっくりと話す機会はあまりなかったから高校生組も大人組も盛り上がり、最終的には優馬も爽介も近藤先生のことを将希先生と呼ぶくらいには仲良くなった。  俺はまだ照れくさいから近藤先生って呼ぶけど。  一通りご飯類は食べ終わり、高校生の食欲に先生ふたりは驚いていた。  俺がりんご飴を食べていると間もなく花火が始まるとのアナウンスがあり、円になるように座っていたのを1列に並ぶように座り直した。  特に意識もせず、俺は麻橋先生の隣に座ることになった。  肩が触れ合うくらいの距離まで近づき、俺はりんご飴を持ったまま空を見上げる。  なんだか……不思議な気分だ。  学校の先生とこうやって花火大会で花火を見るなんて。  すると先生も同じことを思っていたのか、アナウンスが流れる中俺にだけ聞こえるように話しかけてきた。 「……不思議だな」 「……本当に……」  まさかこうなるなんて、誰が思っていただろうか。少女漫画顔負けの展開だ。驚きのあまり夏休みが終わる感傷に浸る間もない。  一瞬、一瞬だけ先生の顔をちらりと見てみる。  すると先生とぱっちり目が合い、見たことがバレたのが恥ずかしくなってすぐに逸らしてしまった。  ……一瞬しか見ていないのにすぐに目が合ったということは、先生はずっと俺のことを見ていたというわけで……  (……くすぐった……)  顔が赤くなるかと思ってりんご飴を食べた。りんご飴を食べるのに集中するふりをして。 「お、始まる……!」  先生の反対側の隣に座る優馬がそう声を出したのを合図に顔を上に上げると、暗い夜空に花火がぱあっと打ち上がった。  身体の中まで響くくらいの轟音を上げながら、花火が次々夜に咲いていく。  大きく色鮮やかなものから、小さい花火が連発で次々と打ち上がったり。  散るときにキラキラと輝くものもあれば、咲いてすぐに消えてしまうものまで、様々だった。  周りのひとたちが歓声を上げたり、盛り上がったりする中俺たちは静かにその花火を見ていた。  ……長かったようで短い夏休みが、もう終わる。  

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