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「文化祭か。とうとうこの季節がやってきたんだな」  夏休みが明け、休み明けのテストも終えたとき。  高校生活の中でも外せないイベントトップ3には必ず入るであろう、文化祭。  今日はその打ち合わせをするらしく、ホームルームの時間を使って文化祭実行委員がそれぞれの役割をクラスメイトに割り当てるらしい。  その間、先生は椅子に座ってスマホを触って……って、マジか。  あ、でも一応話を聞く気はあるのか時々実行委員の男子と話している。  実行委員の名前は、ええと……清水だっけ? 「じゃ、あとは吉水(よしみず)に頼んだからみんなちゃんと話聞くんだぞー」  ……吉水だった。相変わらず名前ってのは覚えにくいな。  吉水が教卓に立ち、全員を見渡した。  吉水は明るい男子たちのグループにいつもいるもののまとめるのが得意で、どちらかというとふざけているほうの男子だけどこういう行事のときは頼りになるって爽介が言ってた。  俺はよくわからない。仲良くないから。 「はいっ、ちゅーもく!」  吉水が2回手を叩き、無理やりクラスの注目を自分に集めた。  俺もそいつの顔を見ると、委員会の話し合いのときに配られたと思われるプリントを持ち、説明を始めた。 「今年の文化祭は、例年通り2日間に渡って行われるんだけど、1日目は出し物。2日目はクラス発表というのも例年通りなんだけど……俺は、とある作戦を立てた。それをみんなに今から聞いてもらおうと思う」  絶妙にダサいポージングを決めながら吉水はかっこつけ、それがウケなかったことに多少傷ついたのか少し声を震わせながらそのとある作戦とやらを話し始めた。  ……なんか、ここでクラスの団結を感じたような気が。 「去年に引き続き、出し物の最優秀賞、クラス発表の最優秀賞、総合優勝というものがある。いずれかで最優秀賞をとったクラスは、修学旅行先の沖縄での水族館のイルカショーを最もいい席で見られる……という最高の優遇つきだ。これは皆も知っているね?」  うんうんと全員が一斉に頷いた。  最もいい席って……そんなにいい席なのか……? 「だが、俺は知ってしまったんだ。隣のクラスのC組が全ての最優秀賞をかっさらおうとしていることをね。この情報は間違いなく俺の耳で聞いたものだから、確定だと思ってくれていいよ」 「なんだと!? そんなこと、あっていいはずがない!」 「そうだよなぁ! イルカショー、いい席で見たいよなぁ!!」  おお! とクラス全員が何故かそこで盛り上がった。え、そこ盛り上がるとこ? とは言わないでおこう……  後ろに座る爽介も俺と同じ考えのようで、ええ? と小声で言っていた。  少し離れた位置に座る優馬……あいつはだめだ。無類の海好きだから、誰よりも盛り上がっている。  あんなに雄叫びを上げている優馬は少なくとも初めて見た。 「だが、俺は思いついてしまったんだ……」  やけに演技かかった顔で、クラス全員を吉水が静めた。 「出し物の最優秀賞、総合優勝はできなくても……クラス発表では最優秀賞は取れるんじゃないか、ってね」 「……どうして……?」  どこかから聞こえた疑問の声に、吉水がふっと芝居を始めたかのように笑った。 「考えてもみろ……うちのクラスには、この学年のトップ3を担うイケメンがいるんだぞ?」 「……」    おい、全員して俺たちを見るな。  あと優馬、おまえもその中に含まれてんだろどうせ。他の奴らに混ざって俺と爽介のことを見てくるな。

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