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三人の王子様のうち、本当の王子様は爽介が演じる。俺は、オーロラ姫に怨念を持っているというよりは、ただオーロラ姫と強制結婚をしてさっさと王位の位に立ちたいと思っている、オーロラ姫を都合のいい存在と思っている権力にしか興味のないクズ王子役。
優馬はオーロラ姫というよりかはオーロラ姫の持つ地位が欲しいだけ。こちらも権力にしか興味のないクズ役。
爽介はオーロラ姫を救いたいと思っており、心の底から優しい王子役。
まさに爽介にはぴったり。
改めて台本を読み返して、思うんだけど……
「なんだこの、王子たちに10の質問! とかいうふざけたやつ」
「ふっふっふ、それは私から直接説明しんぜましょう」
一旦合わせてみよう、ということになってジャージ姿で集まっているところ、台本を考えてくれたと思われる演劇部の子が俺の目の前にやってきた。
え、と戸惑っていると眼鏡をくいっと上げながら、言う。
「物語というものには、ユーモアが必要なのでございます。10の質問というのは、オーロラ姫のことをどれほど愛しているかというものを測るものになりますが……そういう名目で、会場の笑いを誘ってほしいのです」
「……はあ」
更に戸惑っていると、どこからやってきたのか吉水も加わってきた。
「まっ、よーするにここは肩の力を抜いてもいいよーってことだよ。御三方の見せどころと言っても過言じゃないね」
「……へえ」
つまり、あまり役とは関係なしに面白いことを言え、と。
随分と無茶ぶりをされるものだな……と思うけれど、優馬がいれば問題はなさそうだ。
爽介も同じことを考えているのか、呑気におっけー! と言いながらけたけた笑う優馬のことを見つめていた。
優馬はひとを笑わせるのが得意だし、特にこういう目立つものだとはりきるから心配はいらないと思うけど。
「あれだろ? 仮に女性の好みは? とか聞かれても鞭の扱いが上手いひととかそんな感じで答えればいいんだろ?」
「そうそう!」
いや、逆にそれでいいのかよ。
……なんだろう、どうしてだか急に不安になってきた。
台本通りこなせばいいし、俺にはセリフも少ないから別にいいかとか思ってたけど案外難しそうだ。主に、優馬の暴走を見届けるのが。
台本をじーっと見つめていると隣に麻橋先生が立った。
いつの間にここにいたんだこのひと。
「いやー、作り込まれてる台本だよなあ。ちゃんと真面目にしないとダメなところではしっかりしてるし、笑いが欲しいところではちゃんとふざけてるし」
「た、怠慢教師……!」
「ま、俺に演技とかよくわかんねえけどなー」
あんたが一番演技してるだろ。
少なからずこの場では一番上手いだろ。
……とは、言わないでおこう。
このひとになにをされるかわからないからな……
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